血液型と性格
●血液型性格学の根拠は何か ― 血液型で何がわかるか
血液型相性診断や血液型性格分類などの知識が一般的に広まっているのは周知の事実です。NHKの世論調査によると、首都圏の調査対象者のうち75%が「血液型と性格には関係がありそう」と回答しました。昔(明治時代)陸軍医による将校兵754人を対象とした血液型と階級・身体・懲罰経験などについての調査では「B型には優秀な兵士が多く、44%が上等兵になっている」と報告しています。また数年前、B型人間はチームワークがよいとの理由で、B型のみ集めて会社を経営している社長の話題がありました。いずれも血液型による差別問題に発展しかねない報告です。
血液型と性格との関係については、予想以上に巷で信じられているようです。しかし、現段階での脳の研究からは、血液型が脳の活動様式に影響を及ぼしているとはとても思えません。にもかかわらず1911年に血液型が発見されて以来、実に多くの研究者たちがABO式の4つの血液型と人間の性格・気質・行動との関連を求めて研究を行ってきました。
大村政男著『血液型と性格』(1990)はそうした研究の歴史を ”偉大なる錯覚の歴史であった”と論じています。
最近、血液中にある血小板MAO(モノアミン酸化酵素)の活性が、脳の神経伝達物質の活動に影響を与え、それによって行動や性格に影響してくることが知られるようになってきました。MAOが低値の人はアルコール依存症にかかりやすく、スリルと冒険を求める傾向が強く、外向性で、攻撃行動・喫煙傾向が高いそうです。しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません。
現在のところ、科学的には脳の機能に血液型が関係しているという確たる証拠はないのです。
●血液型性格学に信憑性はあるのか? ― 血液型と性格はどこまで関係があるか
***血液型による相性判断や正確判断は信じてもいいのか?
・血液型性格判断に科学的な根拠はない
雑誌などの血液型相性判断や性格判断を試してみて自分に当たっていると感じる人は多いかと思います。でも本当に血液型で性格は決まるのでしょうか。
血液型と性格の関係については心理学でも研究が行われています。しかしその研究を総合すると、血液型による性格判断には科学的な根拠は何ひとつないと言っていいでしょう。
血液型性格判断の結果と、性格心理学の理論に基づいて作成された性格テスト(たとえば、矢田部ギルフォード性格検査など)の結果との間には、一貫した相関性は認められていません。つまり、血液型性格診断は、性格心理学で科学的に分析された結果とは一致しないことになります。
また、医学者や生理学者の間でも、A型やB型の血液型の成分の違いが人間の精神機能に影響を与えるとは理論的に考えにくいという見解が主流となっているようです。
・血液型性格判断が人気の理由は?
ではなぜこれほどまでに血液型性格判断を信じている人が多いのでしょうか。心理学の立場からその原因を探ってみましょう。
まずひとつには、誰にでも当てはまりやすい傾向が特定されているためです。たとえば「A型は神経質」と言われますが、B型にもAB型にも神経質に該当すると思う人はたくさんいます。つまり、A型に特別に多い性格的傾向ではなく、一般的に多い性格特性であるために、当てはまる人が多くなるわけです。
また、自分はB型だから自由奔放に行動するタイプのはずだと思い込んだ人は、それに応じた態度をとるようになることもあります。その行動を見ると、今度は周りの人も「やっぱりB型だからだ」と解釈します。すると、さらにB型の人はその解釈に応じた行動をとるようになり、しだいにB型的な性格になる可能性は十分あります。これを心理学では「自己成就予言」といいます。
さらに、他人を判断する材料として身近にあるからでしょう。たとえば、友人を紹介する時も「彼はA型です」といえば、相手は一般的に知られているA型の性格からその人をイメージすることができます。この手っ取り早さが、血液型性格判断が広まった理由のひとつと考えられます。
要するに、私たちは自分の性格を知る正確なものさしを持っていないので、身近にある血液型性格判断や雑誌の性格テストなどを利用しようとすると言っていいのではないでしょうか。
○YGとの相関なし
○誰にでも当てはまる
○自己成就予言
○ステレオタイプ(一般化する) ― サブタイプ化(例外化する)