心理アセスメントと何か
心理アセスメントの方法には観察法・面接法・心理検査・調査法がある。観察法には、人間の行動をあるがままに観察する自然観察や行動観察法、ある一定の条件を設定して観察を行う条件観察・実験等がある。面接法はフレームを設けないでする自由面接や相談室で時間などを決めて行う直接面接などがある。また面接室ではなく、廊下や働いているところで話し合うなどの生活場面面接なども実践の場では使用されている。心理検査は大きく評定法・質問紙法(Y-G検査、MMPI)作業法(クレペリン検査)投影法(ロールシャッハテスト・TAT)等がある。心理アセスメント(査定)とは「臨床心理学的アプローチを効果的にするために、クライアント(来談者)の主訴内容である不適応状態の内容の原因や問題点を明らかにし、その問題を解決するために具体的な処方(治療の理論や技術)を使用するかを判断する課程」である。言葉を変えればクライアントの心理援助のための、必要な情報を設定することであろう。臨床心理学の近接学問領域である精神科では面接は「診断」という領域になろう。診断は「患者さんと面接し、血圧、尿、レントゲン、CTスキャン、MRI等の医学検査をし、お医者さんが患者さんを診察して病気の原因を判断し、治療方針を決めること」である。また経済学領域でも企業診断等が使用される。この場合は、中小企業診断士などの職業資格にもあるとおり企業体を身体に例え、経営の問題点を調査することである。診断は本来は医学用語のDiagnosisでありDiaは「完全に」とかあらかじめ、beforeの「前もって」などの意味であり、gnosisはギリシャ語の「あるいは神秘的なことを知る」などの意である。医学の診断、治療方針及び予後の予測に対し、臨床心理学では「心理査定(Pychological assessment)」が使用される。アセスメントの英語の意味は「評価、査定、課税額」等である。一般的には環境影響評価などで使用され「開発が環境に与える影響を事前に予測評価し保全措置の検討をする」ことである。医学は疾病、病因論から「診断」が使用されるが、臨床心理学では人格の発達、特性、知的能力などの成長発達因子の健康面にも関心を持つので、査定(アセスメント)を使用する。
臨床心理業務は1)心理査定2)心理面接3)心理地域援助4)研究調査である。
このような心理アセスメントでは精神的・知的疾患を発見する方法には、行動観察法、面接法観察法、心理検査法等がある。
1)観察法 によるアセスメント
成功する面接のためには、クライアントと直接会って、心の状態についてたずねたり、話を聞くだけでは十分ではなく、非言語的情報である表情、動作、坐り方や座る位置などを観察して、その真意を感じとることが必要になる。
精神症状の把握は、患者が診察室に入室する時の観察から始まる。言葉で話す内容より、表情、その口調、態度・ふるまいの方により強く精神状態が表出されていることがある。
問診では患者の表情、話し方、理解力や注意力、見当識、意識状態などを観察し、錯覚や幻覚の有無、思考の筋道、感情(気分)状態、睡眠や食欲、自我意識、記憶・記銘、知能
などを調べる。
2)面接法によるアセスメント
通常の面接形態には、個人面接(個人対個人)、合同面接(被面接者が複数の場合)、並行面接(事例で2つの面接がすすめられる)、協同面接(面接者が複数の場合)等がある。面接の形態はケース事例の内容や目的・技法によって適宜組合して対応されている。
面接法による心理アセスメントには、情報収集のための調査的面接法と診断治療のための臨床的面接法がある。アセスメントとしての面接は臨床的面接であり、臨床心理のアセスメントには心理検査と心理面接(心理検査による情報も含めて直接面接による)がある。つまり有効な治療のためには、クライアントの問題や障害及びその原因や背景を把握し、クライアントが経験している症状を理解し、どのような援助や対処をとればよいかを適切に検討していくことである。いわゆる診断し予後を予測し、そのための効果的治療方針を決定しなければならないのである。同時にクライエントの治療に対する動機づけを向上させる。クライエントの健康的な部分であるところの問題に取り組んでいける能力などについても把握する必要がある。代表的なアセスメントは心理検査であるが、初回面接においてもアセスメントは重要な仕事である。また診断やアセスメントと同じ意味で「見立て」が使用され、主訴を持つクライアントとの初めての直接に会ってする面接は「インテーク面接」「初回面接」「受理面接」「診断的面接」と呼ばれている心理学的診断が中心である。
しかし、多くの臨床事例では、クライアントの問題は複合的であり心理的問題だけに特定されることはないといっていい。身体的発達、器質障害、家族関係、経済環境等々である。さらに昨今のような社会環境が激しく高速で変化するような時代になればその変化に適応できずに発症する「フューチャー・ショック」によるPTSDなども考慮されなければならなくなってきた。
従って、臨床心理の問題は、心理的事象にだけとらわれずbiopsychosocial (生物・心理・社会)な観点からアプローチする必要があると思われる。
アセスメントのための面接技法
したがって診断面接であろうと治療面接であろうと、クライアントの話を良く聞き、良く観察し、相互に信頼関係(ラポール)を醸成することが肝要である。最初からラポールが存在するのではないから、上手な面接を進めていくプロセスの中でさまざまな課題やクライエントの抵抗や に対応する中でラポールが醸成されるのである。そのためには面接を上手に進める面接技法が必要になる。面接にはクールな頭脳(科学的で冷静な思考)と、ホットな対応(あたたかい受容的な心と態度)が必要になる。初回面接の目的は「見立て」、「診断」であり、結果として正確な診断と予後の見通しが欠かせないのはいうまでもない。しかし面接の目的がこの点だけならば、精神医学診断マニュアルに見習えばいいのである。臨床心理学における初回面接を考えた場合、面接技法の基本に、クライアントの心が癒しが入っていなければならない。山中が「厳密な診断や見立てを前面に出しすぎると、探索的になりクライアントの思考が自発的建設的方向に向かわず、セラピストの目は、病的、病状的なものに行きがちで、クライアントがもつ、治癒可能性などの内的可能性に対する見立てがしにくくなるきらいがある・・・」と述べていることに共感を覚える。インテーカーがマニュアルどおりに面接をすすめて面接はうまく推移したが、次回からクライアントは来談しなかった、ということでは困る。臨床心理学の初回面接は、適切な見立ての場であるとともに、その場がクライアントにとって「心の癒し」「心理援助」につながり安心して来談できる場所にならなければならないのである。臨床心理学の基本的考え方を踏まえた面接のみならず、クライアントの問題解決への糸口にならなければならない。と同時にクライアントにとっては、治療者を自分にとって本当に信頼してよい治療者かどうかを判別する面接となる。初回面接は双方にとって治療への動機づけの貴重な第一歩になるのである。
①信頼関係・協力関係をつくること: 初回面接で、心理アセスメントを受けるクライアントの心は不安と緊張のために防衛的心理が働いている。このようなクライアントの心を真摯な態度で傾聴し、理解し暖かく受け入れ、批判や審判的態度をとらずサポーティブな態度で接することである。つまりリレーションを作り上げねばならない。リレーションとは信頼関係のことである。その良好なものをラポール(rapport)という。この信頼の上に、心理アセスメントやその先の治療がある。このラポールがあるからこそクライエントは安心して自分の心の本当の問題を話せるのである。安心、親しみ、好感といったラポールが両者の良好なリレーションをつくり、その上に自己開示や共感や受容が生まれるのである。
②インフォームド・コンセント(informed consent)が重要:インフォームド・コンセントとは説明と同意のことである。基本的人権擁護やクライアントの協力を得るということからも心理面接の目的、意味、クライアントの利益を説明し、同意を得ながらすすめていくことが重要である。本人ばかりでなく家族に治療の目的のみではなく、副作用についてしっかり説明をすることによりコンプライアンス(compliance)服薬遵守につなげる。クライアントは自分の判断で薬を中断することがある。またコンプライアンスには家族の協力が欠かせない。このようなアプローチは、心理教育的家族療法として注目されてきている。
③カウンセリング技法の原則を守る。アセスメントではややもすると医学検査のように機械的になりがちであるが、心理アセスメントの面接ではこれではいけない。共感的理解(empathic understanding)が必要になる;共感的理解とはロジャーズ(Rogers,C.R.)のクライエント中心療法におけるカウンセラーの基本態度である。カウンセラーが「クライエントの心の世界をありのままに感じとる」ことである。単なる同情(sympathy)ではなく感情移入(empathy)である。従って、クライエントはカウンセラーとともに自己の内的世界への認知を高めて行く事ができる。受容的態度(acceptance)とは、あるがままにクライエントを受け入れることである。受容はロジャーズのクライエント中心療法の重要な概念で、クライエントの表情や態度を批判や評価を交えず、無条件に肯定しクライアントをありのままに受け入れる態度のこと。この態度により、クライエントは自分の本当の心の問題を語ることができる。つまり、自己開示が促進される。⑤言語的非言語的コミュニケーションとは、クライエントに対して、詰問、尋問、探索的に「なぜ」「どうしてそのようにしたのですか」・・・それはイエスですかノーですかという質問による進め方よりも、あなたはどのように感じたのですか、どう思いますか、どんな風に、というようにクライエントが自分の内面を見つめ気づくような質問ですすめていく。具体的にはクライアントの言葉に「うなづき」感じたことがあれば反復(繰り返し,言い換え)、感情を明確化し、時にはクライアントの心の中の整理を助けるために沈黙を保ち、あるいは質問し、支持する等のように、面接技術技法を上手に用いながらリレーションを深めたり、問題の核心を把握することが重要である。
面接では言語によるコミュニケーションばかりでなく、非言語的コミュニケーションである「表情」、「視線」、「動作」や「姿勢」、「沈黙」等もアセスメントには重要である。 面接者はこのようなクライアントの言葉にできない心を把握する必要がある。そのためには、面接者自身がしっかりした理論と知識をもち、主観的な印象や妥当性のない診断基準に左右されず、わずかな兆候でもしっかり観察できるようにしたい。⑥カウンセリングルーム(面接場)、時間、座る位置などについては以下のように考えられる:生活場面面接などもあるが原則として個室での面接が望ましい。話の内容が漏れないように、電話や人の出入りで面接が妨害されないような環境が必要である。インテーク面接時間は1時間前後(40~60分)、クライアントの状態により、必要な場合は2時間位、心理検査等が必要な場合は初回面接は1回~3回のように数回に分けて行う。また面接室ではは真正面に向かい合う180度対面は、緊張感や圧迫感を感じさせてしまうので、お互いに落ち着いて適度の緊張状態を保ちながらできる はす向かいであるところの90度対面法が適度な距離と思われる。
⑨面接を妨害する要因
例えば、AさんとBさんの対話のプロセスの中で、Aさんは○印と感じ意識化するとその意識化のプロセスでそれは六角形に変わり、言語化で四角と表現し、それをBさんが五角と聞き、Bさん自身の価値観や準拠枠などがバイアスとして働くことにより、三角と理解し三角と感じてしまう。客観的アセスメントと異なり、面接では観察者自身の主観的な見方やクライアントの心の防衛から面接が妨害される。このようなゆがみの要因としては、ハロー効果(光背効果ともいう、印象の良い所は、すべてよいと認識する)、寛大効果(長所は寛大に、欠点は低く評価される)、中心化傾向(ばらつきのない中心付近の判断をする)、対比的エラー(対比的なものが強調されて近くされる)、先入観、思い込み、抵抗(面接を妨害する遅刻など)、面接者への感情態度(陽性感情転移で面接者への親しみや愛情感情や陰性転移で面接者への憎しみや否定感情)等々から発生する。このような妨害を防ぐために、行動観察や客観的データを参考にし、経験豊富なカウンセラーからスーパーバイズを受けながらすすめていくことが必要である。
⑩面接の記録。インテーク面接を記録する場合、事実の記述と解釈の記述を混同しないようにする必要がある。有名なロジャースがはじめの頃の先輩のカルテをみたらそこに書かれていたのは事実ではなく解釈だけであったという話がある。インテークシートの様式は、各治療機関によって異なる。 原則として面接中には記録は取らない。終了後記録するし基本的にはテープはとらない。取るときは本人の了解を得ること。一般的には筆者らが使用しているインテーク用紙をひとつの参考例とされたい。
2)臨床心理学的アセスメントのし方・プロセス(受付から傾聴まで)
1) 心理アセスメントとしての面接場面では、登校拒否、対人恐怖症、パニック障害、不安神経症、過食症、躁うつ病、精神分列病、心身症、発達障害(精神発達遅滞や自閉症)、老人問題、恋愛や新入学、自己実現、結婚、子育て、会社の上司との人間関係、リストラ、職場での人間関係の悩み等、またその悩みのために不安、不眠、緊張が生じ不適応に陥り、日常の生活上の支障が出ている人など多種多様の相談がある。臨床家は、このような問題の核心を把握し診断し、有効なアプローチをとらなければならない。心理アセスメントの面接診断基準のマニュアルはないので各臨床家の準拠する理論や学派によってもその診断基準で対応する。臨床家は、自己の立場で診断の目安を持って面接しているのが現状である。例えば、①外因、内因、心因の順序に分けて対応したり、あるいは②正常-異常の症状を基準にしたり、さらに③DSM-Ⅳを目安に対応している。医療機関より依頼された紹介の場合すでに医学的診断を経て来談しているので、心理的要因を中心に考察すればよいが、直接来談した場合は精神症状は同じでも異なる原因による疾患である場合もあり、特に注意を要する。例えば、ストレス性疾患と判断したケースがいわゆる身体疾患の甲状腺機能障害による精神症状であったり、適応障害と見立てたケースが内因性疾患の初期の精神分裂病反応であったり、と心理アセスメントは容易な仕事ではない。
従ってインテーカーは、外因性、内因性、心因性、適応障害等の知識とアセスメントの知識を持ち、精神疾患や障害が疑われる場合は専門医に受診させなければならない。特に初心者は「見立て」を間違わないように、診断基準に基づいた科学的思考法と面接技法の習得と実践が必要である。よき面接者はよき査定者である。
2)インテーク面接の受付。受理の電話は、親切に細かな配慮を必要とする。面接の良否は、信頼性ある受付から始まっている。不安な心のクライアントの、相談目的、状況、来談者する人は誰か、来談日時、場所、相談室の地図が必要かどうか面接担当者の名前等々をコミュニケーションしてほしい。
3)インテーク面接 とは:クライアントの訴える問題から、その対応や程度を明らかにし、治療に結びつける面接である。クライアントと面接し、診断に必要な情報を収集し、クライアントの希望や動機などについて明らかにする。最初は経験者が面接者(intaker)になり治療は他のスタッフの治療者が行う場合がある。必要なことは面接者の紹介、役割、担当者の交替の有無、担当相談機関、相談システムの説明と、同意を受けることが必要である。リファー(refer)とはクライアントの問題が、自己の専門外もしくは能力以上の場合、ほかの関連機関に依頼することの必要性の検討である。必要に応じて他機関を紹介する。医学的問題は医師による医学的診断検査等である。例えば精神病の問題は精神医療機関に依頼すること。ケースワーク(casework)とはクライアントが、生活上の問題や課題を抱えている場合は、まず生活の確保のために、専門領域のケースワークに依頼し、生活環境の調整をしなければいけない。例えば 教師、家庭などの地域の人々で支えていく。専門家が独りで支えるのではない。クライアントの状態の必要に応じて知能、学力、人格、などの心理検査をする。さらに家族、職場関係者(親、友人、上司)の面接等の情報を得る。 本人との面接のみで、問題にアプローチできない時は、親や家族や友人や教師、上司との面接の中でアセスメントに必要なクライアントの生活史、親子関係、教師、友人との関係等の情報を得る必要がある。特に自我の発達が未熟な子供の場合は、自己の置かれている状況を客観的に把握できず、かつ、その状況について言語化することもなかなか難しいことが多いので特にこの必要性が高くなってくる。子どもの心理面接によるアセスメントで重要なことは、その問題が緊急介入を必要とする問題か、あるいは継続面接で対処していく問題かを考察しなければならない。子ども自身ではなく家族面接が有効と考えられる。この中で、本人がなかなか口にできなかったことや、話しにくいこと、あるいは気づいていないこと、忘れている事実関係などについて知ることができる。①本人以外の客観的情報を得る必要性がある。;前者の問題が医学的なことならば、a)専門家医師などへの連携、協力の必要性の有無の判断であるところのcasework,リファーをしなければならない。後者の問題は、問題の種類、程度(子どもの内面、問題行動)を多面的に知る。(b)発達上の問題(年齢相応の知的、情緒的,身体的発達を知る)や子供の場合はその内面や家庭における問題を知る(c)親と子の問題や周囲との調整(親と子の来談動機や親との分離、自立の程度から親側、親子関係の課題)を知る(d)心理療法が適切なのか等々をあわせ有効な治療を継続していくことになる。またクライアントが思春期、青年期の場合は、疾病性や異常性の有無に加えて、性的発達に伴う問題や親からの分離独立 、仲間との交友関係、学校学業、将来の希望等を把握することが重要である。
以上のように家族面接を進めていくことが望ましい。また子供だけではなく成人のメンタルヘルス上の問題に対しても、夫婦の問題をはじめ家族面接の必要性が重要になってきている。家族面接は(a)家族内の力動関係を言語的非言語的に把握できる、(b)面接を通じて家族の不安軽減とともに面接者と家族内の協力関係を作ることができる等々メリットが考えられる。特に注意すべきことは、心理力動論的行動論的理解が必要な場合は、家族全体とその中でのクライアントのダイナミズム(家族、生活上の変化や家族内力動の子どもの位置付け)を知らなければならない、この力動関係を把握せずアプローチすることは、いたずらに問題の犯人探しをしてみたり、クライエントと家族の間の秘密を不用意に話してしまい不信感を助長させ、かえって問題を紛糾させることになりかねない。家族面接は慎重にする必要がある。
総合診断(見立て)をするためには クライアントの行動観察情報、受理面接者の得た情報や理解、その他家族、職場の関係、学校の先生、保母等々といった人々からの情報、そして心理検査、行動観察、面接等の結果から総合的に判断する。それに基づいて、クライアントに最も適切な心理学処遇がなされる。来談者の主要な相談内容のことを主訴という。主訴からクライアントを特定し、言語的非言語的コミュニケーションのなから問題の核心を把握することが重要である。不登校、出社拒否等のような事例の場合では、クライアントの基本的な障害の有無の判断、本人の性格や自我の状態、置かれている環境状況を把握する。時には登校拒否や出社拒否の背景に家庭内や職場あるいは疾病利得の問題が存在することもある。中にはクライアント自身がそのような問題に気づいておらず、表層的な面接のコミュニケーションにはあらわれてこないこともある。インテーカーは、クライアントの悩み、訴えの中から、問題の原因やきっかけ、本質を把握するように努めることが大切である。
また面接の中での、面接者とクライアントのラポールや防衛性を観察し、クライアントの防衛機制と自我の状態を観察し、治療の心理療法の選択について検討する。面接者が会ったクライアントのイメージからカウンセラーがクライアントに抱く感情、つまり逆転移の有無をチェック、クライアントの服装や態度、座る位置など行動からさまざまな情報を得ることが必要である。また、なぜ今、その問題が出てきたかといった問題発生のメカニズムの時期、問題の程度、クライアントの反応の理解と、治療方針の確立等の問題に対して、クライアントは今までどのように対処してきたのか、あるいはその問題解決のために、専門家に相談してきたのか、また、どのような経路でクライアントは面接に至っているのか、それらのプロセスについてクライアントはどのように感じているのか、クライアントを取り巻く周囲の人々はどのように感じ、どのようなサポートが得られるのか、あるいはキーパーソンは誰か。
クライアントの幼児期、青年期、成人期にかけての発達の状態、出来事、健康状態、しつけ、友人関係、養育者との関係、学業成績などを聞いていく。幼児期においては、古い記憶の中にある、幼児期体験や反復して出現する夢など。また、アイデンティティが確立される思春期においては、性的体験や異性との関係。成人期には結婚や夫婦生活や就職、出産、周囲の状況(家族、友人、教師、上司、同僚等)、社会環境の理解。家族、学校、職場の状況と人間関係、また、クライエントの健康的側面、趣味、スポーツ、あるいは将来への志向性などについても聞く。このような情報を土台にアセスメントしていくことが必要になってくる。クライアントに妄想、幻聴、幻視があれば、それらは、外因性精神障害に起因することも多く、心因性疾患との誤りは、医療を受けるべきクライエントに不利益を助長させることになってしまう。妄想,幻覚、支離滅裂、情緒の著しい変動、現実検討能力の欠如、著しい社会からの逸脱行動、自傷他害行動等々が見られれば内因性疾患が疑われる。例えば、不登校のケースに中に、いわゆる正常範囲の思春期の悩みやストレスではなく、分裂病の初期症状と考えてみることも大事である。外因性、内因性と心因性の疾患を間違えて対応することはクライアントの内的混乱を助長するばかりでなく、本来的医療の治療を遅らせることになる。青木の云うように「心因性は最後に考えるという習慣を身につけたい。外因性を否定し、内因性を否定し、最後に心因性を考える、ということを自らのアセスメントの手順としていただきたい。まず、クライエントの訴えに虚心に耳を傾け、「本当に心因性だろうか」、「訴え通り、身体疾患ではないか」等と考えてみる必要がある。また、それだけでなく、ヒステリー様の症状はしばしば身体疾患に重畳しやすいので常に注意しておかねばならない。」これがアセスメントでは非常に重要である。さらに 臨床心理学からのアセスメントで特に重要なのは、クライアントの自我機能についての見立てがある。1)現実吟味能力、2)欲求不満への耐性、3)適切な自我防衛機制、パーソナリティの統合と安定、柔軟性、自我同一性が確立されているかといった尺度で見立てを進める。クライアントの適応状態(クライアントの自我機能と環境要因との関係)から、現代社会のbiopsychosocialなストレッサーによるストレス反応としての自律神経失調、心身症、不安感、情緒不安定、不眠、抑うつ等々の傾向が見られるが、周囲のサポートやセルフコントロールで対応できる正常範囲の問題である。現実検討能力等は正常範囲であるが、不安,恐怖、緊張、うつ状態等で自ら悩み心理援助を求めにくる神経症状態( 環境要因と本人の性格的要因が起因している2つの場合がある)。不安定な人間関係、被害的不安、非制御的怒り,衝動などを示す境界例は神経症から精神病のレベルに近いものまで幅広い範囲のものまで含まれる。初期の面接では、むしろ神経症症状の主訴が大半で、過度な不適応行動は見られない。しかし、面接の回数を積み重ねる中で境界例特有(人間関係障害、被害感、易怒性)の症状が見られ、結果的に診断がなされる場合がある。また逆に妄想、被害感等を訴えるため精神病と診断されるが、結果的に面接者の対応によって、妄想様の主訴も消失することから境界例となることがある。見逃しは致命的誤りになる。それらが感じ取れる場合は精神科に結び付けなければならない。もしくは精神病圏(妄想、迫害の訴え)と疑われていたが継続面接により心因反応的問題と把握される場合などがある。 幻覚、幻視、幻聴、妄想など論理的思考の欠如、支離滅裂、気分情緒の著しい変動、自閉、易怒感、現実吟味能力の欠如、検討式障害、著しい社会的不適応、自傷他害行為等々があり一定期間、この症状が継続しているなどの行動や症状があれば精神病水準の病態を考えて対処しなければならない。基本的には、面接の中でその問題点や異常性、症状を的確に把握することが重要である。以上のように、インテーク面接では外因性、内因性、心因性の見立て、さらに内因性、心因性の病態の特定である神経症、境界例、精神病などの病態の基本的な査定(鑑別)ができることが求められる。この基本的な査定(鑑別)は、豊富な経験と高度な専門性の上になされるのでかなりの経験を要する。見立ての誤りをしないために、経験ある専門家の臨床心理士や精神科医師などの指導を意見を求めることが望ましい。
また操作的診断基準である、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-Ⅳ(1994)1軸.精神症状 2軸.人格障害と発達障害3軸.身体障害4軸.ストレス・家族関係・社会生活・対人関係 5軸.社会適応の多軸診断が特徴である。臨床心理業務も近年、他領域との協力関係が緊密になってきているので共通診断が必要になってきている。その点、多軸診断の中に臨床心理領域の課題 が多くあり、大いに参考活用できると思われる。
この診断の後に心理学的処遇がなされる。心理学的処遇とはクライアントの問題解決への心理的援助過程のことである。そのためどのように処置(treatment)するかは、いろいろな場合が考えられる。1回限りの助言で終わることもあれば、面接がずっと続けられることもある。また、治療契約後に面接者の所有する相談施設で継続し治療をしていくのか、その他の施設で処置するのか、治療方法の選択(精神分析療法、遊戯療法、行動療法、家族療法、自律訓練法等)などどうするか、クライアントの防衛、現実検討能力はどうなっているのか。以上のことから問題の本質を理解し、適合する心理療法を選択決定する。一方、心理的処遇とは、クライエントに情報提供やアドバイスを行うことである。学生の進路相談、職業適性のための情報提供、転学や編入に関する情報提供などがそうである。山本は「コミュニティ心理学は環境の改善に向かうよりアクティブに予防的介入のアプローチ」と考えている。クライエントが環境的改善の必要な状況がある職場の管理職へのコンサルテーション(consultation)などが行われる。クライエントへのアドバイスとしては支持(サポートする、励ましたり指導したりする、アドバイス、指導、誘導)(ソーシャ、表現(心の中に抑圧されている感情を吐き出させるカタルシス、アサーション。クライアントは自己理解、受け入れられているという感じをもつことが大切)、洞察(深層心理の中に入っているものに気付かせ、精神分析的アプローチカウンセリング、気付きのゲーム)。等を使用して援助をしていく。日常的なスキルの低下が問題を大きくしている場合がある。その場合にはソーシャルスキル訓練をする。スーパービジョン(supervision)面接のし方、アセスメントの方法 的問題について助言、指導を受ける。クライエントの悩みに対して、どのように行動すればよいのか具体的に指示を行い、クライエントの行動の形成や行動の修正を図ること。カウンセラーがクライエントに電話の掛け方、友人との付き合い方などの人間関係のスキル(技術)個別教育を行なうこと。以上のように、依頼から受理、主訴、問題発生のメカニズム、発達歴、生活史、既往歴、現病歴、家族面接の記録や心理検査の結果、クライアントからの情報と客観的な情報や資料と照らし合わせるアセスメントが行なわれる。重要なことは、クライアントの成長促進因子の発見と治療への動機付けにつながることが肝要である。心理アセスメントでは初回面接をいうが、広義には面接治療全体のことをいい、「検討仮説の立案」というくらいと考えたい。 明確な査定は難しく、臨床家が見立ての成否の検証をし、普段から協連携し、精神医学と薬物、DSM-Ⅳなどの知識を修得し守秘義務を守り、関連法規を理解し、 臨床事例経験を積む必要があろう。