2010年5月21日

メンタルヘルスの基礎知識
②正常と異常(こころの健康と不健康 正常と異常)
メンタルヘルスにおける正常と異常
「心の健康とは何か」あるいは「正常か異常」を考えることは難しい。1930年の第一回世界精神衛生連合の合意では4つにまとめられている。①身体、知性、情緒等が調和している。②良く環境に適応し、他の人々とよく調和していること。③自己に対する幸福感を持っていること。④仕事や職業に、自己の能力が発揮され、効率的生活をしていることである。このような健康や病気の概念と正常、異常の概念は必ずしも同一とは限らない。例えば平均規準によると、数量的に平均身長や平均体重、あるいは血液検査の生理学指標のように正常値、異常値があり、それから大きく離れている場合は異常ということになる。また多数値が正常で、少数値が異常ということにもなろう。とすれば虫歯のない人は現在は非常に少ないから、歯に虫歯や治療後のない歯科健康者は統計的基準では異常となる。正常で健康、異常で病気もあり得るのだ。また社会的に受け入れられる「好ましい」ものが正常となる価値規準がある。反抗的非強調的な行動、その集団に受け入れられない文化や習慣は異常となる場合がある。

③ストレスと適応

適応臨床家の面接においては、クライエントの訴える体験と共に同じフィールドで理解しなければならない。例えば分裂病の異常な体験についても個別的な違いとして理解していくことが必要である。非合理的な思考についても、人間は愛の世界では同じような体験をしてきたことがあるだろうし、強迫神経症の常同な行為にしても、旅行に出かける時など何回かガス栓をチェックした人も多いに違いない。もちろん回数だけで正常異常の判断はできないのである。サリバン(Sullivan, H.S.)は「まず人間である」という立場にたつ必要がある。我々は環境にうまく適応しながら生きている。この状態を適応 adjusutment という。適応は人が環境に主体的に調和している状態をいう。順応(adaputation)は生活体が主体的努力とは別に環境と適合することを指すので適応とは異なるとされる。 我々が生きていくためには常に環境との兼ね合いが出てくることになる。ホームズらの人生出来事尺度の出てくる新入学、就職、退職、昇格、降格、左遷、結婚、離婚、出生、死亡等は、変化に適応していくための課題である。その変化にうまく適応していくことは喜びであり、また、成長でもある。しかし、この適応にうまく対応できなかったり、失敗したりしたときが不適応となる。内心では職種・人間関係に不満を抱いているが、言い出せずに、じっと我慢している。自分から進んで配置転換・退職などを希望する。あるいは無断で欠勤する。さらに出社拒否になったり心身症・自律神経失調症などを呈することもある。ただし、適応能力が低い本人の性格(まじめで、神経質、自己主張ができない、几帳面で、融通が利かない)と環境変化、あるいは適応能力が高くても、その能力を超えるような大きな変化との関係も考えていく必要がある。

①心の不健康な状態の類型
適応困難
(1)職場不適応
・内心では職種・人間関係に不満を抱いているが、言い出せずに、配置転換・退職などを希望するというようなケースである。しばしば無断欠勤など、3A(p.34資料1参照)を起こすことがある。
この他、下記の心身症・精神症・自立神経失調症などの症状を呈する事もある。

(2)家庭
・家庭不和、家庭内暴力などを起こす。離婚に結びつくこともある。

(3)学校
・登校拒否、校内暴力などを起こす。

1.身体症状
(1)心身症
・心理的なストレスにより引き起こされた体の病気…実際に臓器に異常がある。
  例:胃潰瘍・十二指腸潰瘍・蕁麻疹・円形脱毛症(p.12 表2参照)
・対処 内科的治療、軽い精神安定剤の服用、心理相談により治癒することが多い

(2)自律神経失調症
・自律神経による調整機能が不安定な状態を言い、精神症状として扱われる場合もある。器質的異常には至らないが、頭痛、めまい、疲労感、不眠、ふるえ、発汗異常などを起こす。臓器選択制をもつ場合も多く、例えば心臓がドキドキする場合は心臓神経症と呼ばれる。

2.精神症状
(1)神経症(ノイローゼ)
・症状 次のような症状に分類される
・対処  軽い精神安定剤の服用、心理相談などで改善する事が多い。
・その他 ノイローゼというのは、この神経症をドイツ語で言ったもの(Neurose)。
ただし、新聞などでは精神症をノイローゼと書くことがある。本当は間違いなのだが、一般にこのように通用している。
a 神経衰弱…不安神経症や強迫神経症のように中心となる症状をもたないが、心身の疲労などを基本にして起こってくる反応で、注意集中困難・不全感・記憶力減退・能力低下などを中心とする症状を持続するものを神経衰弱または単に神経症と呼んでいる。

b 不安神経症…不安に圧しつぶされる。訳もなく胸がドキドキするので、心臓神経症といわれることもある。

c 強迫神経症…何か或る事をせずにはいられない。自分でも馬鹿らしいと思うが、せずにいられない。(ドアの錠を何度も確かめる。手を何度も洗う)不快感を伴うので、本人にとっては深刻である。

d 恐怖症…或るものが怖い(高所、閉所、赤面、不潔、疾病、尖端など)

e 心気症…体を検査しても異常がないのに、常に体のどこかに異常があると思っている。(場合により、精神症の一症状である事もある)

f ヒステリー…心理的な原因で ①身体機能障害がおきる(視野狭窄、歩けない、水を飲めない、嘔吐など) ②精神障害がおきる(失神、記憶障害など)

g 抑うつ神経症…うつ病との差がはっきりしてないが、違いは、自分の不調をよく自覚している所にある。
 

(2)統合失調症
・症状:10歳台~20歳台に発病しやすい。
   :被害的な内容の妄想「皆が自分の悪口を言っている」「人に後をつけられている」等がある。
   :1人でニヤニヤしたり、落ち着きがなくなる。
   :仕事の能力が落ちることもある。
・原因 未群
・対処 専門医の治療が必要である。
    本人が自発的に受診する事はあまりない。従って、まわりの人が連れて行くことになる。その場合、まず最初にまわりの人が専門医に、どう対処すべきか相談すると良い。
・その他 この病気は薬の服用などで、かなり改善される。
しかし、再発の危険が大きいので、医師の指示通りに、治療を続ける事が必要である。

(3)躁うつ病
・症状(症状により以下の三つの病名に分けられる)
・原因 未群
・対処 専門医の治療が必要である。
    やはり、この病気も本人が自発的に受診する事はあまりない。まわりの人が専門家に相談する事が必要である。
・この病気は薬の服用などで、かなり改善され、後の経過も良い。

a うつ病…気分が沈む、仕事が進まない、自分はとるに足らない人間だと思う、人に迷惑をかけていると思う、死にたい、等の精神症状
不眠、頭重、食欲不振、体がだるい、等の身体症状。

b 躁病…多弁、多動、勤務中に仕事以外の事に熱中する。不必要な高価なものを買う、誇大的になる、等 不眠(眠れない)

c 躁うつ病…上記のうつ病・躁病が交互に現れる。

(4)脳器質性精神症
  脳器質性精神症には以下のようなものがある。

a てんかん
・症状 50秒~5分間持続する。
・原因 先天的、後天的な脳の微細な障害
・対処 薬の服用で殆どの発作が抑えられる。
     ただし、服薬中でも、徹夜・過労などの強いストレスがかかると発作を起こす事がある。

b その他
・梅毒性精神障害
・頭部外傷性精神障害
・脳腫瘍
・脳卒中
・パーキンソン症…振戦麻痺
・肝脳疾患…肝と脳が障害され、その間に機能的関連を有する疾患

(5)中毒性精神症
体外から体内に持ち込まれた有毒物質によって起こされる精神障害を一括して中毒精神症という。

a アルコール依存症(慢性アルコール中毒)
  ・症状 とにかく、一旦飲み始めたら自分の意思ではとめられない。
・原因 個人差があるが、日本酒にして1日に3合以上を10年続けると発病するといわれている。
・対処 治療には完全な断酒しかない。

b その他
・覚醒剤中毒
・モルヒネ中毒
・コカイン中毒
・一酸化炭素中毒
・幻覚剤中毒
・シンナー中毒

(6)その他
 a 心因反応
 ・はっきりした心因(例 失恋)によっておこされた精神症状
  上記の精神病の症状が現れる事もあるし、前記の精神症の症状が現れる事もある。
  治療はその症状により異なるが、原因が除かれると、改善することが多い。

②アセスメントの方法

心の不健康な状態の類型
精神障害の原因別に考え、外因、内因、心因の3つに分ける。しかしこれは即病名を指すわけではない。外因性には器質性、中毒性があり脳の疾患である。統合失調症(精神分裂病)、躁うつ病、そのどちらも含まれる非定型精神病などである。内因は未だ原因は不明ではあるが、その疾病は内部的発生(無為の放心状態や昏迷である外界の知覚の不全)であり、その人の遺伝的要素も否定できないもので、今は不明であるが現在では脳内神経伝達物質の代謝異常が関わりが推察されている。やがて解明される要素を持つものである。心因は、ストレスや環境的要因が大きく関わっているもの。神経症やPTSDである。

4-1 外因性疾患(症状性を含む器質性精神障害)
(1)老年性精神障害
(2)精神作用物質使用による精神および行動の障害
1)アルコール依存(慢性アルコール中毒)
2)薬物依存:モルヒネ、コカイン、
3)アディクション:薬物、アルコール、ニコチン等
4)フラッシュバック現象
また使用を中止し普通の生活をしている時、かつて体験した恐慌・錯乱(支離滅裂状態)・幻覚・幻視・妄想が生じることをフラッシュバック現象という。
(3)てんかん

4-2内因性疾患 
内因性疾患とは将来身体的原因が判明されると予想されるもので、現状では精神病の約70%が分裂病、30%が躁うつ病がある。神経症や反応性に起こる異常体験反応、精神遅滞は除かれている。
(1)統合失調症:精神分裂病を統合失調症の平成14年8月24日から29日まで開催され、その中で日本精神神経学会は精神分裂病を統合失調症に精神が分裂しているという病名が患者に社会的影響を与えてしまうことで改名に至った精神分裂病とは思考、感情、意思の過程がうまく働かず個人差があるが、現実との接触感が喪失し精神的統制を失うが知能、記憶は保たれる精神病をいう。外因は否定される。主たる症状は 妄想と幻覚である。妄想とは病的判断の誤り、訂正不能な信念であり、誰も悪口を言っている事実がないのに悪口を言われている等の了解不能な異常な体験である。事実を誤解する聞き間違い等は錯覚であり妄想ではない。錯覚とは実際に存在するものを誤って認識するもの。夜の柳が幽霊に見えるなどである。幻覚とは物が無いのに見える等の対象のない知覚である。他に幻聴(話がないのに声が聞こえる)や幻視(虫がいないのに虫が見える)、幻触(虫が身体をはい回る感覚)等である。これらのために生じる言語や対人関係行動の異常である。症状には陽性症状(幻聴や妄想、自閉的生活、など、すぐに異常と思われる症状)と陰性症状(感情鈍麻=無関心、道徳、知的感情の低下)や無気力、奇妙な格好などの症状)があり、他に客観的表情は硬い、冷たい。空虚、ひそめ眉、しかめ面、とがり口、空笑、態度と行動は昏迷(意欲なく無反応状態、動かなくなる)や減動、カタレプシー(Katalepsie)常同、Stereotype、拒絶症(何事もこばむ、独語)等に症状が見られる。多彩な症状に以下のようなK.シュナイダ-の精神分裂病の1級症状と呼ばれるものがある(*印)。”被害妄想”(人に笑われていると思われていると思う)、追跡妄想、(見張られている)。関係妄想、(悪口をいっている)、血統妄想(エジソンの生まれ変わり)恋愛妄想(有名女優と結婚する)発明妄想(私はノーベル賞学者である)有病率、おおよそ130人に1人(0.7-0.8%)。

(2) 気分障害Mood Disorders:統合失調症と並ぶ2大内因性精神疾患、前者が進行的に慢性的に自我の障害を示すのに対し、躁うつ病は「気分の高揚による活動性の興奮や爽快感、逆に低下により憂鬱や悲哀感という感情及び気分の動揺を中心とする、躁状態”と”抑うつ状態”の両方が一定間隔を置いて交互に循環的に表れる疾患である。その経過は周期的で荒廃状態に至ることはないが、その症状は多様で、軽いうつから重篤の精神病範囲まである。うつ病は単極性障害、と双極性障害に分けられる。
“躁状態”では気分の高揚、開放的、怒りっぽい、疲れない、多弁、多動、浪費、軽はずみな行為等が見られる。うつ状態では思考障害である悲哀感の固執や感情障害では気分変調(自律神経系)、意識化の爽快、不快という情動の気分のコントロールができない。感情鈍磨(感情が低下し無関心な状態)、不安(対象のない恐怖)、危機感(イライラの他に緊張、頭痛等の身体症状を伴う)。アンビバレンツ(相反する感情の存在)があること。身体症状;不眠、頭痛、頭重、動悸、食欲減退、倦怠、性欲減退、月経不順、体重減少、血圧、血糖値上昇等で、場合によっては罪業妄想、貧困妄想、心気妄想等を悲観的な心の状態のために抱くことがある。
混合状態:うつ状態と躁状態の混合状態で躁とうつの移行期にみられる。
1~2年に1回から数回の”躁うつを繰り返す。各状態の持続は2~3週間である。ケアのポイントは家族をはじめ周囲の人々へのうつ病への理解活動をする。励ましは自責の念を高めるkとがあるなどである。本人には、休業が第1である理解させる。る。家族には、励ましは患者の自責感を強めるだけなので避けること。回復期の自殺のリスクが高いことに、後の経過も良い。発病は壮年期に多いが、小児にもまれに発症する。とくに子どもの場合は、躁状態よりも鬱状態がときに認められることがあるので注意が必要である。躁と鬱は1:6。有病率は0.4~1.2%で男女差はない。特にうつ病は分裂病と違い了解が可能であり、治療者と良く話し合い、薬が効果的なので抗うつ剤と生活習慣である栄養と睡眠により回復を目指すことが重要である。
【原因】不明。心理的因子によらずうつ病が発症することはピポクラテスの時代から知られていた。遺伝の影響が大きいと考えられる。躁うつ病の病因に関する現在の仮説では、感情障害の素因をもつ人に心理的・身体的ストレスが加わり、脳内の神経伝達機構(カテコールアミン系やセロトニン系等)になんらかの機能異常が生じ、その結果、感情障害や自律神経の機能異常などによる身体症状が発現すると考えられている。尚、下坂光造は、躁鬱病患者の特徴である執着気質の特徴として、几帳面、まじめ、仕事熱心、他人の評価を気にする、完ぺき主義、を提唱した。テレンバッハ(Tellenbach,H.)は下田と同様にうつ病の性格素因特性として「メランコリー親和型」を提唱している。
発症年齢:発病;20才、50才前後。壮年期に多いが、小児にもまれに発症する。とくに子どもの場合は、躁状態よりも鬱状態が多く見られるのが特徴である。注意が必要

(3)抑うつ状態Depressive state
通常、誘因が認められず、1~2年に1回から数回の割合で繰り返す場合もあり、これを”うつ病”という。抑うつ状態は、この誘因(きっかけとなる出来事)が比較的明確に見られ、感情面では憂鬱、悲哀、思考面では制止、』その他は無関心、自殺念慮、身体面では倦怠感、や不調感の状態である。ライフイベントのかかわりは新築、結婚、昇格、などのうれしい出来事も関係している。適応障害は抑うつ気分と活動性の低下等を示す状態といえよう。具体的には、寝つきが悪い、朝早く目がさめる、気分が重い、集中できない、物覚えが悪くなった、小さなことも決断できない、目覚めがスッキリしない、何か死にたい、食欲がない、下痢や便秘がする、性欲がない、生理不順等、午前中気分や体調が悪く午後にはやや改善するなど。【有病率】通常3~5%、どの範囲までを抑うつとするで異なるが軽うつまで含めると非常に多い。男女差は無い。【原因】性格因としてテレンバッハのメランコリー親和型がある。まじめで、几帳面、周囲に気を配る、人に頼まれたらいやといえない、完全癖などがある。この傾向は特に秩序維持志向が強く、100%何でもきちんとしないと気がすまない、人間関係においてもへの過度の気遣いで疲れてしまうことになる。発症の環境因子としては、これらの生活習慣の秩序維持への変化であるところの失恋、具合格、引越し、家族の死、解雇、リストラ、人事異動、昇進、降格あるいは高年齢による喪失体験、風邪、大量飲酒等も誘因となる。このような生活上の変化に対する認知が通常の人の反応とは異なるということになる。また身体症状が前面に出てうつが隠されている場合もある。特に腸は脳の代理店といわれるほど、脳の感覚的な影響を受ける。ストレスが加わると、腸内の善玉菌が減少し悪玉菌が増加し、下痢や便秘を繰り返したり、過敏性腸症候群となり、そのことが結果的に登校拒否や出社拒否を引き起こす。
【経過】現代社会ではうつ状態は非常に多く心の風邪といわれている。しかし、うつ状態や神経症は、他者から見れば、身体的な怪我のように客観的には明確ではないからややもすると仮病、怠け病根性なし、わがままなどの誤解を受けてしまう。身体の疾患は組織のためにがんばりすぎと見られ、組織に尽くした人と評価される面もあるが、心の病もまじめ人間がかかりやすく、過剰適応である。この点を正確に評価することが必要である。治療(服薬)や業務上の配慮、簡易カウンセリング、教養、ストレス軽減などで比較的早期に回復が促されることが多い。

4-3 心因性疾患
(1)心因性とは神経症に代表される。この疾患は、健康な人でも状況によって誰でもなりうる可能性があるといえよう。神経症とは、フロイトの精神分析理論に代表されるように、日常生活上のストレス(精神的原因)によって、つまり心因(不安や葛藤等)によって起こされる、イライラ、不眠、精神発汗などの精神障害(除外診断)であり、精神病(鑑別診断)ではない。ここでは従来の神経症の診断別に説明する。1980年のDSMでは神経症の独立した項目はない。さまざまな精神障害の項目に入る現代医学では明確な定義は無く心因によって起こる不適応や不安といった心身機能の異常であると考えられるようになってきた。これは言葉を変えると神経症は心因によって発症するといった短絡的見方ではなく、ストレスの受け手である人の虚弱体質や完ぺき主義的性格にかかわっているし、さらにその性格要因は幼児期の親子関係などの生育歴にも関連してくることになる。

1)神経衰弱 
とはいわゆるノイローゼで心身の過労により生じる。過剰適応後の疲労や衰弱である。
神経系統の機能が興奮である 不眠、頭痛、肩こり、倦怠感などに、精神的には、めまい、全身の不安定感、不快な身体感覚、記憶思考力の減退、注意散漫、強迫症状がある。本人の訴えの割には 客観的能力の維持されていることが多い。

2)不安神経症 (パニック障害Panic Disorder) 突然に怖い不安発作が襲う、急に心臓がドキドキし、発汗し、倒れそうになり、窒息するほどで救急受診するが、異常なしや心臓神経症と診断されたりすることがある。パニック障害は、恐怖症が対象が特定のものであるがパニック障害は非特定で突発的に発生する、反復性の不安(パニック)発作の神経症である。また恐怖の再体験を予測し予期不安を呈する。その場所への電車へ乗車できず生活障害にいたることもある。よって外出、乗り物、広場、赤面恐怖等を伴うことが多い。ストレスとセロトニンやノルアドレナリン等の脳内伝達物質の分泌異常との関連性が研究されている。慢性的不安の持続の「全般性不安障害」は心理的要因が大きく、子どもの場合は親(とくに母親)の不安が子供の心に影響を与えることが多いので母親との距離を工夫することにより治療する。母親の症状の改善は子どもの症状の改善につながる。

3)強迫神経症症状:自分でも不合理である考え(例えば自分の手が汚れていると思う)が繰り返し思い浮かぶ強迫観念と、それを回避するための手洗い等の行為を反復する(強迫行為)である。自分でも非合理的と思うが何度も手を洗うという強迫状態が生じる。本人には深刻な悩みである。治療は精神療法、薬物療法などがある。恐怖や不安に、几帳面、まじめひとつのことに取り付いた最後までとことんやらなければ気がすまない等の性格傾向が関わっている。シュナイダーは「自己不確実者」と名づけ自信の喪失、コンプレックスなどのよる悲観の特徴を持つと考えた。また精神分析ではトイレットトレーニングの厳しい躾による几帳面さと不安感の強い性格の形成が影響していると考えている。

4)恐怖症:通常なんでもないものが、恐怖の対象になる。そのために本人が悩み、回避行動が誤解され生活障害をきたすこと。症状には、先端恐怖:はさみの先が刺さるような恐怖。刃物恐怖:ナイフで人をさしてしまうのではないかという恐怖。閉所恐怖:狭い場所が怖いエレベータに閉塞される恐怖。広場恐怖:広い場所での不安。高所恐怖:東京タワーに登るのが怖い。対人恐怖:日本人に多い。他人との関係で強い緊張、不安、恐怖。赤面(人前で顔が赤くなる)、醜形(容姿が醜いと思いこむ)体臭(体臭のため他人に嫌われる)、視線(目つきが悪いために他人の感情を害する)恐怖。不潔恐怖:不潔に対する過分な恐れ。疾病恐怖:何かに触ったら病気になるのではないかという恐れ不合理な考えと自覚しているが、強迫観念(ある考え;例えば火災の危険)と強迫行為(確認;ガス先の締め忘れの確認)のためさらに不安の循環に入ってしまう。その他高い所を極端に怖がる”高所恐怖”、不潔を異常に恐れる”不潔恐怖”、他人のそばにいると強い緊張感や不安感が生じて他人に不快感を与えているのではないかと恐れる”対人恐怖”など社会恐怖以外の大部分の恐怖性障害は、男性より女性のほうに多くみられる。精神分析的考察では、恐怖の対象が不明なため無意識で他の対象が恐怖の対象になったものと考えているといわれている。

5)心気症(異常なほどの身体への心配)
医学検査で異常がないにも関わらず、納得せず身の健康への異常な心配である。勝手に重症の病と恐れで抑うつと不安を訴える。頭痛を重症の脳疾患と思いこむ。不機嫌、抑うつ、イライラ感を示し苦しむ。医師の説明にも納得しないで、ショッピングのように医療機関を渡り歩く。自覚症状は全身倦怠・不眠・頭痛・肩こり・腹痛・胸痛・健忘などがある。心気障害の本質的な病像は、1つあるいはそれ以上の重篤で進行性の身体疾患はないにもかかわらず罹患したと思い医療機関を受診することである。

6)離人・現実感喪失症候群は、自分自身の存在の喪失で人々との現実的接触感がなくなり疎外されているような感じになる障害である。うつ病、恐怖性障害、強迫性障害において訴えが多い。

7)ヒステリー(転換性障害)心理的原因で心身の障害や二重人格が出る)
ヒステリーはギリシャ語の子宮hysteriaヒステリアでピポクラテスが子宮に関係している女性病気と考えたが、1870年代にシャルコーのヒステリーの催眠治療やフロイトの精神分析から心因性疾患として概念化された。ヒステリーのメカニズムは無意識下に抑圧された危険や不快な体験の圧力が増しそれが再び意識化されると耐えられないほどの危機的な状況に追い詰められた時、身体症状となったものをヒステリーという。”転換性障害とは フロイトの無意識の葛藤や願望が身体症状になったものをいい、心臓のドキドキ、ヒステリー性の頭痛、起立や歩行困難、見たりできない等がある。解離性障害とはトラウマを防衛する心の働きで、葛藤が症状として表出したものと考えられる。ユングが考えたもう独りの私になる多重人格や記憶喪失等の障害がある。症状の判別によるが非常に多い。
【解離の原因はト。神経や身体には格別問題が把握されない。ヒステリーの疾病利得には嫌な状況を避けられるという第一次利得と同情を得られる第二次利得がある。
内因性の精神分裂病や躁うつ病のような重病感はないが、簡単に改善しない場合も多い。子供のヒステリーは、強いストレスやどうしようもない状況に追い込まれたと思われる時に発症する。

8)心因反応 はっきりした原因(例、失恋)によって起こされた精神症状で、治療はその症状別になるが問題が解決されると症状は速やかに改善される場合が多い。

9)自律神経失調症
全身症状 倦怠感・易疲労性・寝汗・微熱。身体局所痛 頭重、頭痛、背痛、腰痛、肩こり循環器呼吸器 動悸・息切れ・血圧変動・消化器 食欲不振・下痢・便秘・胃部不快感・腹部不快感 皮膚 多汗・かゆみ 耳鳴り、 めまい
上記の理由で、内科を受診しても、とくに病気の診断がないとき、自律神経失調症と診断されるが、神経症・心身症の病理と同じと考えられる。

10)PTSD Posttraumatic Stress Disorder
PTSD(心的外傷後ストレス障害)が取り上げられたのはDSM-Ⅲの診断基準である。ベトナム戦争後のアメリカの兵士に、つらい戦争体験後も精神障害が続いたことからPTSDが考えられた。自然災害や事故、犯罪戦争など、最近では児童虐待やいじめ等のストレッサーより発生する。症状は、無感覚と情動鈍化、他人からの離脱、周囲への鈍感さなどである。危機的な脅威体験の経験の再体験であるフラッシュバック(侵入性の症状)、恐怖、攻撃性が突然発生することがある。PTSDの発症の有無は状態や本人の認知等により異なる。

11)スチューデントアパシー(退却神経症)
大学生に見られる学業上の無気力、無感動、無関心を特徴とする引きこもりをいう。1978年にウォルターズ(Walters,A.jr)がスチューデントアパシーと呼び、1978年に名古屋大学の笠原が今までの神経症と異なる新しい神経症として「退却神経症」と名づけた。優秀な学生が大学の競争により劣ることを認めざるを得ず、それが受け入れがたく、回避し退却しアルバイトやサークルは続けている状態。自発的相談にあまりない。

  (1)人格障害
人格障害はその人が所属する文化や環境の規範の適応から逸脱し、著しい性格の偏った性格のために、本人及び周囲が悩むことを言う。人格とは価値観や考え方が継続している状態をさす。われわれの考え方や行動は多種多様である。人の食べた茶碗でも別に食べるのが問題ない人。少し触っただけでも不潔に感じる人がいる。従って人の考え方や行動の基準を求めるのは難しい。小児期後期から思春期に起きてきて、成人期になって顕在化する。早期の人格障害の診断は難しい。DSM-IVによれば人格障害はA群の妄想性人格障害(異常に疑い深い)、分裂病質性人格障害(孤立を好み周囲と親密な関心や感情を持たない周囲に無関心で感情を表さない)、”分裂病型人格障害”(奇妙で風変わりな考えや行動を示す)とB群の反社会性人格障害(繰り返し法律やルールを犯し反省しない法律やルールを犯しても罪を感じない)、”境界性人格障害(情緒の不安定と衝動性を特徴とする行動パターンで情緒不安定な人格障害)、演技性人格障害(自己が他人から注目を浴びるための演技的な感情表現他人から注目を集めるためにオーバーに感情表現をする)、自己愛性人格障害”(特権的で自己中心的な行動で他人への思いやり欠如が見られる。子供の頃の他人への共感の発達障害と考えられる。の優越感を持ち、自己中心的で他人への共感の欠如がる。幼児期の他人に対する思いやりの発達障害と考えられている)とCの強迫性人格障害(柔軟性に欠ける、融通がきかない自分のやり方に固執する)、”回避性人格障害(劣等感があり、傷つくことを恐れ、対人関係からも、回避、逃避する)”、依存性人格障害(いつも人に依存する。自分一人ではなにもできないと思っている。従属し、見捨てられないようにする)などに分類される。あからさまに反抗はしないが仕事を引き伸ばしたりして上司を困らせる”受動攻撃性人格障害”などがある。いずれも治療や適応には困難性が見られる。また本人はプライドがあり問題を認識せず心理療法による問題の考え方や優越感の変容には至らないといわれている。この人格障害者は、良好な意思疎通を醸成しづらく対人関係のトラブルを招いたり周囲との間でストレスとなり問題行動となりやすい。原因は親子関係の愛情不足や幼児期の虐待、両親の不和等々と関係していると考えられる。

4-5心身症
(1)心身症
心身症とは「身体症状を主とするが、その診断や治療に心理的因子についての配慮が、特に重要な意味を持つ病態」(日本心身医学会)をいう。心理的・社会的なストレスが関わり発生する身体的疾患(実際に臓器の病気がある)である。ストレスと身体反応のプロセスは、1936年に生理学者のセリエが「汎適応症候群」のなかで警告期、抵抗期、疲弊期のプロセスを経て発症することを示した。つまりストレスは脳から自律神経に影響を与え身体的バランスを崩し拒食症、過食症、過敏性腸症候群、登校拒否等を引き起こす。人間関係、過労、睡眠不足、環境の変化などのストレスで起こる脳のトラブルを過敏性腸症候群。胃潰瘍(消化性潰瘍、十二指腸潰瘍等)、偏頭痛、円形脱毛、めまい、じん麻疹,喘息、神経性嘔吐、神経性下痢、チック(身体の一部を無意味に動かすこと)、書痙(人前で字を書くと手が震える)、本態性高血圧などがある。「身体症状を主とする神経症と心理的要因を主とする身体疾患。子供の場合は情緒的障害を伴うので、多くが心身症となる。子供のストレスと心身症には起立性調節障害、夜驚症、心因性発熱、再発性腹痛、頭痛、赤面、汗かき、吐く、不眠、失神発作。ぜんそく等がある。心身症の診断基準のとり方によって違うが非常に多い。 対処 内科治療、軽い精神安定剤の服用、心理相談により治療することが多い。

1)過敏性腸症候群
大脳の感覚と腸が非常に強い条件反射にあるため日常生活の人間関係などのストレスが原因で下痢や便秘を引き起こすことを「過敏性腸症候群」という。健常な時に腸は、ビフィズス菌(善玉菌)”が支配しているが、ストレスによりウェルシュ菌や大腸菌(悪玉菌)が支配し腸が過敏になりトラブルを起こす。緊張しやすい神経質な性格が基本にあり試験やいきたくない学校や職場に行く時にトイレに行きたくなったりする。条件反射が形成されると問題が解決しても症状は改善されないこともある。

2)虚血性心疾患
ストレスの多い中間管理職が狭心症や心筋梗塞などの「虚血性心疾患」になる人が多い。心臓の冠動脈が動脈硬化によって起こる。経営者やエリートビジネスマンの過度の緊張状態が交感神経系を刺激し、内分泌、新陳代謝、心臓血管などに影響し疾患になる遺憾が得られて印す。アメリカの心臓外科医のフリードマンとローゼマンは、虚血性心疾患患者の行動パターン「タイプA」と呼んでいる。性急な行動、競争心、エネルギッシュ、責任感などの特徴を示す。特にストレスコーピングとして自律訓練法等のよるリラックスが要求されている。性格及び精神的ストレスが原因と考えられる。

(3)生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
1)○ 摂食障害Eating disorderは、ストレス性の過食、拒食のような食行動の非コントロールである。拒食症である神経無食欲症は、若い女性(30歳を過や男性の場合もある)が痩身の美願望ダイエットのうちに拒食になる。非合理的で衝動的に食欲が抑えきれず過食し嘔吐剤を使用したりする。過食症の神経症大食症は、大食し下剤使用等を繰り返す。異常にやせていても、本人はやせていることを認めない、危機感が乏しく、そのため発病後も医師にかかるまでに数ヶ月を経過している場合が多い。原因は、特に母親との情緒問題、幼少時期の虐待体験などが推察されている。摂食障害の人の性格はまじめで完璧主義、傷つきやすさ、人格の未熟さ等があるといわれている。治療は心理療法、家族療法が有効です。思春期の特有の葛藤や挫折等のストレスを考え。摂食障害の性格を踏まえアプローチします。治療は家族の理解を得ながら退行している子どもを育成しなおす認識の直し自立心を持たせるように進めていく

2)燃え尽き症候群(burn out syndrome)とは心理学者のフロイデンバーガーFreudenberger,H.により提唱された症候群で、理想に燃えた熱心な医師、看護婦、ケースワーカー等対人関係サービス業の人々が、仕事に熱心のあまり集中しすぎて燃え尽きるように無気力、作業能率の低下、対人関係の不調をきたす』状態になることをさす。
出社者拒否、サラリーマンアパシーシンドローム、途中下車症候群、無断欠勤症等は、職場の人間関係業務と不適合、昇進への不安、セクハラ、パワーハラスメント、などのストレスによるものが多く、必ずしも精神疾患にようものが多いとはいえない。

3)最近よく観られる適応困難症  
その他にピーターパンシンドローム、モラトリアムでいつまでたっても大人になるのを拒否している社会適応がなかなかできない男性。青い鳥症候群:幸福を求めて転職を繰り返す人々を言う、メーテルリンクの「青い鳥」に由来する。空の巣症候群:子育てが終了して生きがいを無くし無気力なった中高年に見られる現象。テクノ症候群、休日神経症、朝刊、サンドイッチ症候群、新サンドイッチ症候群、上昇停止症候群、荷降ろしうつ、自己調査、いじめられ、ヤマアラシ、超清潔等がある。

4)睡眠障害
現代はストレス社会で、深夜のテレビ、コンビ二、スーパーが普及し、交代制勤務等のため良く眠れない人が増加している。睡眠障害の中で一番多きのが「不眠症」である。不眠症(持続的睡眠不足)には過眠症(過剰な睡眠)で夜眠れず昼間に眠くなる場合と時差ボケや夜間勤務等のように睡眠サイクルの生物学的問題がある。すーっと眠れない(入明昏案)、眠った気がしない(熟眠困難)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)等がある。ストレスマネジメントが必要である。

心理アセスメント

心理アセスメントの方法には観察法・面接法・心理検査・調査法がある。観察法には、人間の行動をあるがままに観察する自然観察や行動観察法、ある一定の条件を設定して観察を行う条件観察・実験等がある。面接法はフレームを設けないでする自由面接や相談室で時間などを決めて行う直接面接などがある。また面接室ではなく、廊下や働いているところで話し合うなどの生活場面面接なども実践の場では使用されている。心理検査は大きく評定法・質問紙法(Y-G検査、MMPI)作業法(クレペリン検査)投影法(ロールシャッハテスト・TAT)等がある。心理アセスメント(査定)とは「臨床心理学的アプローチを効果的にするために、クライアント(来談者)の主訴内容である不適応状態の内容の原因や問題点を明らかにし、その問題を解決するために具体的な処方(治療の理論や技術)を使用するかを判断する課程」である。言葉を変えればクライアントの心理援助のための、必要な情報を設定することであろう。臨床心理学の近接学問領域である精神科では面接は「診断」という領域になろう。診断は「患者さんと面接し、血圧、尿、レントゲン、CTスキャン、MRI等の医学検査をし、お医者さんが患者さんを診察して病気の原因を判断し、治療方針を決めること」である。また経済学領域でも企業診断等が使用される。この場合は、中小企業診断士などの職業資格にもあるとおり企業体を身体に例え、経営の問題点を調査することである。診断は本来は医学用語のDiagnosisでありDiaは「完全に」とかあらかじめ、beforeの「前もって」などの意味であり、gnosisはギリシャ語の「あるいは神秘的なことを知る」などの意である。医学の診断、治療方針及び予後の予測に対し、臨床心理学では「心理査定(Pychological assessment)」が使用される。アセスメントの英語の意味は「評価、査定、課税額」等である。一般的には環境影響評価などで使用され「開発が環境に与える影響を事前に予測評価し保全措置の検討をする」ことである。医学は疾病、病因論から「診断」が使用されるが、臨床心理学では人格の発達、特性、知的能力などの成長発達因子の健康面にも関心を持つので、査定(アセスメント)を使用する。
臨床心理業務は1)心理査定2)心理面接3)心理地域援助4)研究調査である。
このような心理アセスメントでは精神的・知的疾患を発見する方法には、行動観察法、面接法観察法、心理検査法等がある。

1)観察法 によるアセスメント
成功する面接のためには、クライアントと直接会って、心の状態についてたずねたり、話を聞くだけでは十分ではなく、非言語的情報である表情、動作、坐り方や座る位置などを観察して、その真意を感じとることが必要になる。

2)面接法によるアセスメント
アセスメントのための面接技法
したがって診断面接であろうと治療面接であろうと、クライアントの話を良く聞き、良く観察し、相互に信頼関係(ラポール)を醸成することが肝要である。最初からラポールが存在するのではないから、上手な面接を進めていくプロセスの中でさまざまな課題やクライエントの抵抗や   に対応する中でラポールが醸成されるのである。そのためには面接を上手に進める面接技法が必要になる。面接にはクールな頭脳(科学的で冷静な思考)と、ホットな対応(あたたかい受容的な心と態度)が必要になる。

①信頼関係・協力関係をつくること: 初回面接で、心理アセスメントを受けるクライアントの心は不安と緊張のために防衛的心理が働いている。このようなクライアントの心を真摯な態度で傾聴し、理解し暖かく受け入れ、批判や審判的態度をとらずサポーティブな態度で接することである。つまりリレーションを作り上げねばならない。リレーションとは信頼関係のことである。その良好なものをラポール(rapport)という。この信頼の上に、心理アセスメントやその先の治療がある。このラポールがあるからこそクライエントは安心して自分の心の本当の問題を話せるのである。安心、親しみ、好感といったラポールが両者の良好なリレーションをつくり、その上に自己開示や共感や受容が生まれるのである。

②インフォームド・コンセント(informed consent)が重要:インフォームド・コンセントとは説明と同意のことである。基本的人権擁護やクライアントの協力を得るということからも心理面接の目的、意味、クライアントの利益を説明し、同意を得ながらすすめていくことが重要である。本人ばかりでなく家族に治療の目的のみではなく、副作用についてしっかり説明をすることによりコンプライアンス(compliance)服薬遵守につなげる。クライアントは自分の判断で薬を中断することがある。またコンプライアンスには家族の協力が欠かせない。このようなアプローチは、心理教育的家族療法として注目されてきている。

③カウンセリング技法の原則を守る。アセスメントではややもすると医学検査のように機械的になりがちであるが、心理アセスメントの面接ではこれではいけない。共感的理解(empathic understanding)が必要になる;共感的理解とはロジャーズ(Rogers,C.R.)のクライエント中心療法におけるカウンセラーの基本態度である。カウンセラーが「クライエントの心の世界をありのままに感じとる」ことである。単なる同情(sympathy)ではなく感情移入(empathy)である。従って、クライエントはカウンセラーとともに自己の内的世界への認知を高めて行く事ができる。受容的態度(acceptance)とは、あるがままにクライエントを受け入れることである。受容はロジャーズのクライエント中心療法の重要な概念で、クライエントの表情や態度を批判や評価を交えず、無条件に肯定しクライアントをありのままに受け入れる態度のこと。この態度により、クライエントは自分の本当の心の問題を語ることができる。つまり、自己開示が促進される。⑤言語的非言語的コミュニケーションとは、クライエントに対して、詰問、尋問、探索的に「なぜ」「どうしてそのようにしたのですか」・・・それはイエスですかノーですかという質問による進め方よりも、あなたはどのように感じたのですか、どう思いますか、どんな風に、というようにクライエントが自分の内面を見つめ気づくような質問ですすめていく。具体的にはクライアントの言葉に「うなづき」感じたことがあれば反復(繰り返し,言い換え)、感情を明確化し、時にはクライアントの心の中の整理を助けるために沈黙を保ち、あるいは質問し、支持する等のように、面接技術技法を上手に用いながらリレーションを深めたり、問題の核心を把握することが重要である。
面接では言語によるコミュニケーションばかりでなく、非言語的コミュニケーションである「表情」、「視線」、「動作」や「姿勢」、「沈黙」等もアセスメントには重要である。 面接者はこのようなクライアントの言葉にできない心を把握する必要がある。そのためには、面接者自身がしっかりした理論と知識をもち、主観的な印象や妥当性のない診断基準に左右されず、わずかな兆候でもしっかり観察できるようにしたい。⑥カウンセリングルーム(面接場)、時間、座る位置などについては以下のように考えられる:生活場面面接などもあるが原則として個室での面接が望ましい。話の内容が漏れないように、電話や人の出入りで面接が妨害されないような環境が必要である。インテーク面接時間は1時間前後(40~60分)、クライアントの状態により、必要な場合は2時間位、心理検査等が必要な場合は初回面接は1回~3回のように数回に分けて行う。また面接室ではは真正面に向かい合う180度対面は、緊張感や圧迫感を感じさせてしまうので、お互いに落ち着いて適度の緊張状態を保ちながらできる はす向かいであるところの90度対面法が適度な距離と思われる。

⑨面接を妨害する要因
例えば、AさんとBさんの対話のプロセスの中で、Aさんは○印と感じ意識化するとその意識化のプロセスでそれは六角形に変わり、言語化で四角と表現し、それをBさんが五角と聞き、Bさん自身の価値観や準拠枠などがバイアスとして働くことにより、三角と理解し三角と感じてしまう。客観的アセスメントと異なり、面接では観察者自身の主観的な見方やクライアントの心の防衛から面接が妨害される。このようなゆがみの要因としては、ハロー効果(光背効果ともいう、印象の良い所は、すべてよいと認識する)、寛大効果(長所は寛大に、欠点は低く評価される)、中心化傾向(ばらつきのない中心付近の判断をする)、対比的エラー(対比的なものが強調されて近くされる)、先入観、思い込み、抵抗(面接を妨害する遅刻など)、面接者への感情態度(陽性感情転移で面接者への親しみや愛情感情や陰性転移で面接者への憎しみや否定感情)等々から発生する。このような妨害を防ぐために、行動観察や客観的データを参考にし、経験豊富なカウンセラーからスーパーバイズを受けながらすすめていくことが必要である。

2)臨床心理学的アセスメントのし方・プロセス(受付から傾聴まで)
1) 心理アセスメントとしての面接場面では、
2) 例えば、①外因、内因、心因の順序に分けて対応したり、あるいは②正常-異常の症状を基準にしたり、さらに③DSM-Ⅳを目安に対応している。医療機関より依頼された紹介の場合すでに医学的診断を経て来談しているので、心理的要因を中心に考察すればよいが、直接来談した場合は精神症状は同じでも異なる原因による疾患である合もあり、特に注意を要する。例えば、ストレス性疾患と判断したケースがいわゆる身体疾患の甲状腺機能障害による精神症状であったり、適応障害と見立てたケースが内因性疾患の初期の精神分裂病反応であったり、と心理アセスメントは容易な仕事ではない。
従ってインテーカーは、外因性、内因性、心因性、適応障害等の知識とアセスメントの知識を持ち、精神疾患や障害が疑われる場合は専門医に受診させなければならない。特に初心者は「見立て」を間違わないように、診断基準に基づいた科学的思考法と面接技法の習得と実践が必要である。よき面接者はよき査定者である。
総合診断(見立て)をするためには クライアントの行動観察情報、受理面接者の得た情報や理解、その他家族、職場の関係、学校の先生、保母等々といった人々からの情報、そして心理検査、行動観察、面接等の結果から総合的に判断する。それに基づいて、クライアントに最も適切な心理学処遇がなされる。来談者の主要な相談内容のことを主訴という。主訴からクライアントを特定し、言語的非言語的コミュニケーションのなから問題の核心を把握することが重要である。不登校、出社拒否等のような事例の場合では、クライアントの基本的な障害の有無の判断、本人の性格や自我の状態、置かれている環境状況を把握する。時には登校拒否や出社拒否の背景に家庭内や職場あるいは疾病利得の問題が存在することもある。中にはクライアント自身がそのような問題に気づいておらず、表層的な面接のコミュニケーションにはあらわれてこないこともある。インテーカーは、クライアントの悩み、訴えの中から、問題の原因やきっかけ、本質を把握するように努めることが大切である。
また面接の中での、面接者とクライアントのラポールや防衛性を観察し、クライアントの防衛機制と自我の状態を観察し、治療の心理療法の選択について検討する。面接者が会ったクライアントのイメージからカウンセラーがクライアントに抱く感情、つまり逆転移の有無をチェック、クライアントの服装や態度、座る位置など行動からさまざまな情報を得ることが必要である。また、なぜ今、その問題が出てきたかといった問題発生のメカニズムの時期、問題の程度、クライアントの反応の理解と、治療方針の確立等の問題に対して、
青木の云うように「心因性は最後に考えるという習慣を身につけたい。外因性を否定し、内因性を否定し、最後に心因性を考える、ということを自らのアセスメントの手順としていただきたい。まず、クライエントの訴えに虚心に耳を傾け、「本当に心因性だろうか」、「訴え通り、身体疾患ではないか」等と考えてみる必要がある。また、それだけでなく、ヒステリー様の症状はしばしば身体疾患に重畳しやすいので常に注意しておかねばならない。」これがアセスメントでは非常に重要である。さらに 臨床心理学からのアセスメントで特に重要なのは、クライアントの自我機能についての見立てがある。1)現実吟味能力、2)欲求不満への耐性、3)適切な自我防衛機制、パーソナリティの統合と安定、柔軟性、自我同一性が確立されているかといった尺度で見立てを進める。クライアントの適応状態(クライアントの自我機能と環境要因との関係)から、現代社会のbiopsychosocialなストレッサーによるストレス反応としての自律神経失調、心身症、不安感、情緒不安定、不眠、抑うつ等々の傾向が見られるが、周囲のサポートやセルフコントロールで対応できる正常範囲の問題である。現実検討能力等は正常範囲であるが、不安,恐怖、緊張、うつ状態等で自ら悩み心理援助を求めにくる神経症状態( 環境要因と本人の性格的要因が起因している2つの場合がある)。

第1節 心の異常を診断する

第2節 面接によるアセスメント
1アセスメントしての面接
2面接技法
3面接による診断
4家族面接

第5章 心理アセスメント心理検査(Psychological Test)によるアセスメントとは何か

1 心理テスト
1-1前章による面接に続き重要な心理アセスメントに心理テストがある。臨床心理学の目的は、人間の心の科学的考察で、知能や心理特性や発達等を科学的客観的に測定することである。このことを心理査定という。言葉を変えると、ある人のパーソナリティの心理特性について考察し、その人の問題に対し適応する心理臨床(心理的治療)の理論や技法を決定するための測定を心理アセスメント(査定)という。例えば医学では患者さんの疾病を調べるために血液、体温、脈拍、検尿、血圧、レントゲン、CTスキャン、MRIなどの検査をし、その結果のデータから診断し、より有効な治療方法を決めて治療をする。臨床心理学でも、クライエントに面接をし、必要により心理検査を施行し、問題点を査定し、その結果から評定し、適切で有効な治療方法を決定する。また心理検査は、問題を特定し、適応する心理療法を選定するために使用される。心理療法の治癒の効果測定法としても、あるいは心理療法を継続するか終了を決定するためのアセスメントとしても使用される。また人格測定の難しいところは実証科学では、実際に存在する物体を測定する。しかし心理は人間の身体のように客観的に測定できない。ゆえに心理検査では性格を間接的方法で測定することになる。まず性格を概念として特定に、その概念をもとに予測される行動を想定し、尺度化し測定することになる。従って言語的な面接では把握が難しい深層心理の力動的な心の動きも測定できるメリットもある。そのような観点から重要なアセスメントである。

1-2 心理検査の種類 心理検査には質問紙法、作業検査法、投影法がある。質問紙法は理
論的仮説に基づき、人格の特性を表す質問にアンケート調査で質問をし「はい・いいえ」等の回答させることにより測定する。想定する対象行動と質問の整合性が検査の精度を高める。個人でも集団でも施行でき結果の集計判定も比較的簡便な方法であるが、就職試験などでは合格のために恣意的に「うそ」の回答をすることがある。これを防ぐために「虚位尺度」などを設定し精度を高めている。Y-G、MMPI、田中ビネー、WAIS等がある。作業検査法 はある作業をさせて、その作業の仕方や結果から人格を把握する視覚や運動の反応を必要とする道具等を使ってある作業をさせて、その作業プロセスや結果から性格や傾向値が表れることを利用して性格を測定し、さらに職場適応等を予測する。代表的なテストとしてクレペリン検査がある。質問紙法と異なり恣意的うそが入り込む余地が無いため客観的なデータが取れるが、深層心理的領域を測定することはできない。また回数が多くなると慣れの問題が出てくる 投影法 はあいまいな刺激に対応する反応から人格の内部を把握する。ある物に見えてあるものに見えないようなあいまいな刺激に対する反応を解釈し構造化していくテストである。ロールシャッハ、TAT、SCT、HTP、バウムテスト等がある。
心理検査には、知能検査(ビネー式、WAIS、WISC)と人格検査(質問紙法=MMPI、Y=G、CMI)と投影法=R,SCT,TAT)がある。最近メンタルへルス分野で使われているSDS、GHQ等は精神症状評価尺度である。心理検査はアセスメントの補助手段であり、症状評価尺度は症状や重症度のおよび治療効果の評価手段である。

 C氏53歳は、妻、娘(小学5年)と地方のメーカーの設計技師として、平穏な暮らしをしていたが、おりからのバブル崩壊の波をうけて、会社は大幅なリストラクチャリングに取り組むことになった。C氏の所属する部門の業務もなくなり、東京の会社に出向することになった。本人、人事部、家族も仕事が見つかったことでの、喜びの異動であった。
出向先の会社での3ヶ月にわたる教育中に、C氏は自分の手が震えるのに気付いた。
上司に相談し整形外科で検査してもらったが筋肉には異常なかった。神経科を受診し「書痙」と診断された。自律訓練法、心理療法、薬物療法を施行された。当初、いっこうに症状は改善されなかった。結果的に、会社をやめ、地元に就職し家族の元に帰ることを心に決めた時期に症状は減少していった。図Bは、治療過程で継続的に施行したバウムテストである。C氏の心の状態の変化を的確に現していると思われる。

3-2 H.T.P.( House Tree Person)テスト 、人物画、家族画
バックBuck,J,Hの人格検査法である。家、木、人物を描くことによって被験者のパーソナリティや環境との相互作用を把握しようとする心理診断、心理療法 である。この検査では描画を描いた後の検査者による質問(PDI:Post Drowing Inquiry or Interrogetion)が大切である。投影法テストの中でもTATやRorschach testと異なり、HTPはバウムテストと同じく自ら積極的に描くという行為によって構成される。前者は刺激に対する受容的反応であるのと異なる。それだけに被験者の成熟度合いや知的な面が反映される。