2010年5月21日

心理検査(Psychological Test)の種類と方法

第5章 心理アセスメント心理検査(Psychological Test)によるアセスメントとは何か

第1節 1 心理テスト
1-1前章による面接に続き重要な心理アセスメントに心理テストがある。臨床心理学の目的は、人間の心の科学的考察で、知能や心理特性や発達等を科学的客観的に測定することである。このことを心理査定という。言葉を変えると、ある人のパーソナリティの心理特性について考察し、その人の問題に対し適応する心理臨床(心理的治療)の理論や技法を決定するための測定を心理アセスメント(査定)という。例えば医学では患者さんの疾病を調べるために血液、体温、脈拍、検尿、血圧、レントゲン、CTスキャン、MRIなどの検査をし、その結果のデータから診断し、より有効な治療方法を決めて治療をする。臨床心理学でも、クライエントに面接をし、必要により心理検査を施行し、問題点を査定し、その結果から評定し、適切で有効な治療方法を決定する。また心理検査は、問題を特定し、適応する心理療法を選定するために使用される。心理療法の治癒の効果測定法としても、あるいは心理療法を継続するか終了を決定するためのアセスメントとしても使用される。また人格測定の難しいところは実証科学では、実際に存在する物体を測定する。しかし心理は人間の身体のように客観的に測定できない。ゆえに心理検査では性格を間接的方法で測定することになる。まず性格を概念として特定に、その概念をもとに予測される行動を想定し、尺度化し測定することになる。従って言語的な面接では把握が難しい深層心理の力動的な心の動きも測定できるメリットもある。そのような観点から重要なアセスメントで
ある。

1-2 心理検査の種類 心理検査には質問紙法、作業検査法、投影法がある。質問紙法は理論的仮説に基づき、人格の特性を表す質問にアンケート調査で質問をし「はい・いいえ」等の回答させることにより測定する。想定する対象行動と質問の整合性が検査の精度を高める。個人でも集団でも施行でき結果の集計判定も比較的簡便な方法であるが、就職試験などでは合格のために恣意的に「うそ」の回答をすることがある。これを防ぐために「虚位尺度」などを設定し精度を高めている。Y-G、MMPI、田中ビネー、WAIS等がある。作業検査法 はある作業をさせて、その作業の仕方や結果から人格を把握する視覚や運動の反応を必要とする道具等を使ってある作業をさせて、その作業プロセスや結果から性格や傾向値が表れることを利用して性格を測定し、さらに職場適応等を予測する。代表的なテストとしてクレペリン検査がある。質問紙法と異なり恣意的うそが入り込む余地が無いため客観的なデータが取れるが、深層心理的領域を測定することはできない。また回数が多くなると慣れの問題が出てくる 投影法 はあいまいな刺激に対応する反応から人格の内部を把握する。ある物に見えてあるものに見えないようなあいまいな刺激に対する反応を解釈し構造化していくテストである。ロールシャッハ、TAT、SCT、HTP、バウムテスト等がある。

1-3心理検査の歴史 人間の心を科学的に知る、個人差を知るために心理検査法が発展してきた。心理検査は臨床心理学の中でも、クレペリン検査やロールシャッハ検査のように実際に医学領域で使用されてきた古い歴史を持つ。しかしそれらは精神医学では発展せず、臨床心理学の中で成長し、今では逆に精神医学の中で使用されてきている。また、身体病が中心である内科領域でも心身症が増加するに従い性格研究を除いては治療が考えられず、心理検査は活用されてきている。心理テストはブントの心理学実験にはじまり、1883年のイギリスのゴルドン「人間の能力の探求」(Inquiries into human faculty)による記憶力テストや1890年のアメリカのキャッテルらが実際に行った個人差の研究のための、メンタルテストが人格テストの始まりいわれている。1902年にクレペリンテストが行われたが、精神遅滞児に対する人間愛と科学的アプローチの必要性の観点からの識別と教育のために統一的基準作成のために精神年齢という概念で知能を把握する試みとして、1905年にビネー知能テストが作成された。これが心理検査の土台となりその後客観テストの標準もモデルとなり心理検査発展の一つの要因となった。さらにアメリカのウェクスラーが成人用の知能尺度を考案し、日本でも内田勇三郎が内田‐クレペリン精神作業検査を開発した。現在、使用されている心理テストの種類は世界で9000種以上あるとされている。

1-4心理検査の定義
心理検査とは、ある人の心理(性格や行動)を、専門的方法により、客観的科学的に数量評価し、または一定のカテゴリー・システムにより記述するための系統的方法であるといえる。具体的な心理検査の方法には知能検査、人格検査、作業検査などの方法がある。しかし、心理検査によればレントゲンのように物理学的に心をすかして診断したりすることはできない。統計的数字のみで判定できない。ましてや心の不健康な状態はその成因が心因性のみならず身体疾患の場合も多く、器質性精神障害、症状精神病等を見落とさないことが重要であり、医学との連携が必須である。
心理検査には、知能検査(ビネー式、WAIS、WISC)と人格検査(質問紙法=MMPI、Y=G、CMI)と投影法=R,SCT,TAT)がある。最近メンタルへルス分野で使われているSDS、GHQ等は精神症状評価尺度である。心理検査はアセスメントの補助手段であり、症状評価尺度は症状や重症度のおよび治療効果の評価手段である。

(1)心理検査法の要諦(施行のポイント) 心理検査の目的はクライアントの利益のためであるから、充分な協力と理解が得られるように、説明と同意(インフォームドコンセント)によらなければならない。そのためには被験者との充分なラポール(検査者と被験者の信頼関係)そして対象は心であるので、自分の学歴や資格のみで優位になったり、身体検査のように機械的対応を被験者にしないように注意し検査の目的をしっかり説明し同意を求めなければならない。また、依頼者が誰であるかも重要である。精神医学的診断のために医師からの依頼なのか、裁判の必要性のため裁判官からの依頼か、学校で問題ある児童に対応するための担任教師からの依頼なのか、あるいは家族からの依頼で本人はいやいや心理検査を受ける状況にあるのかなどは把握しておかなければならない。また、テスト結果の心理査定の方向づけをしなければならない。そうなれば専門家同士の情報の共有化のために専門用語が必要になろう。また経験あるスパーバイザーが必要である。使用のされ方やフィードバックをどうするのかも重要である。ややもすると依頼者の期待に答えようとして恣意的な結果を報告してしまわないように気をつけなければならない。従って施行のポイントとしては、検査者とクライアントの信頼関係と協力関係の構築をすること。検査者の学歴や権威を押し出し、医学モデルに基づいて心理検査を行なわないこと。心理テストの理論的背景を理解しながら行うこと。施行スキルを向上させること。心理テストだけでなくクライアントの行動観察にもおよぶこと等が重要である。

(2)テストバッテリーの組み方
ある一つの心理検査の結果から「神経症」であるなどと断定してはいけない。それぞれのテストの適応対象と限界を知りいろいろなテストを組み合わせて対応することが必要である。我々の性格や知能は一面的ではなく多面的でかつ複雑である。ひとつの心理テストの結果からその人の、問題の本質や主訴への回答を断定することはできない。被験者の主訴やその問題に対して、そのテストの適応対象と限界を超えて最も適切な心理検査を組合せて対応すること、つまり質問紙法、投影法、評定法、作業法等のテストを組み合わせて考察することをテスト・バッテリーという。
例え描画テストの結果から、いわゆる盲分析(Blind Analysis)し結論を出すことはすべきではない。まず絵の解釈にあたっても、他の心理テストとのバッテリー、被験者の情報を総合的に判断しなくてはいけない。また不登校のクライアントの場合、本人の性格に対してエゴグラム、Y=G検査、あるいは知的な面にはWAISなどを組み合わせることであり、緊張が高いようだったら箱庭療法やバウムテストなどそれらの検査も踏まえて総合的に判定する。

(3)心理テストの科学性
心理検査は科学的測定法である。そのためには  客観性(objectivity)(医学的な血液検査などのように採点者による主観的判断に影響されないとき客観性があるという。心理検査の中での知能検査や質問紙法のY-G検査などは客観性が高くロールシャッハ検査などの投影法の検査は比較すると低くなる) 妥当性(reliability) (測定内容が適切に把握され、測定目的にその検査が適合しているか、例えば知能を測定するのに体重を測定していないか) 信頼性(validity) (測定の正確さ、再現性、安定性。測定結果に一貫性があること、つまり検査に相関性があり、同じ人への検査は同じ結果になること。検査者が異なっても同じ結果になること。信頼性を数字で表したものを信頼性係数(γ)という。「γ=0.7以上が信頼性があるという。」)が要求される。以上の点が確保されている心理検査を標準化されたテストという。これらを検証することを標準化といい、信頼できる検査とは標準化された心理検査法である。さらに、簡便で手軽にできて、誰でも施行できるなどのような実用性も重要である。検査の手引書に標準化の統計的根拠があればその心理検査は信頼性は高いといえるのである。しかし、心理テストの科学性を低下させるものとしては検査とクライアントの信頼や協力関係が欠いている時、標準化されていない時、検証尺度(Lie scole)が無い時、そのクライアントの状況を無視して適合できないテストを行った場合、特に投影法は検査者のスキルにより結果が左右されるので、トレーニングを受けた人が施行しなければならない。

第2節 心理検査の種類 質問紙法(questionnaire method) :質問に対し「はい」「いいえ」のような自己回答によるものが多い。質問紙法は簡便で、集団施行や統計処理も容易である点である。しかし、質問にうそを応えられる虚偽をどのように考え防止するかという信頼性の問題は残る。

2-1 Y-G性格検査(矢田部・ギルフォード性格検査; Yatabe-Guilford Personality Inventory) 非常に良く使用されている代表的な質問紙法による心理検査。元々統計学者でもあったギルフォードらによって考案され、1945年に谷田部達郎によって日本人対象に改訂された性格テストである。2人のイニシャルをとりY-G検査と名づけられた。測定される性格は、因子分析法により抽出された12因子の性格特性の質問項目を使って個人の性格の全体特性を把握しようとする。具体的には質問紙で「はい、いいえ、どちらでもない」の選択肢から最も質問項目に該当するものを選ぶ。抑うつ性・回帰性・劣等性・神経質・客観性・協調性・攻撃性・活動性・のんきの度合い・思考的向性・社会的向性・支配性などの12の尺度を基本特性として、全体の統計的プロフィールや尺度から性格特性を把握する。簡便で初心者でも手軽に実施、採点、評価できることから初心者もマニュアルどおり判定、わが国で最も使用されている心理検査法のひとつである。施行時間は30~40分で、判定は次の5つの性格特性に分けられる。A型(平均型)・B型(情緒不安定積極型)・C型(情緒安定消極型)・D型(情緒安定積極型)・E型(情緒不安定消極型)であり、産業分野での調査データによれは、D型に近い方が、より良好な適応パターンを示すといわれている。質問紙方全体にかかわることであるが、施行が容易な部分虚偽の回答も予測されることから、信頼性の問題は残る。

2-2精研式パーソナリティ・インベントリィ改訂版
いわゆるクレッチマー(Kretschmer)の気質(Temperament)で 分裂気質(Schizothym)孤立性、空想性、無関心、非社交性など 循環気質(Zyklothym) 世話好き、お人好し、活動 粘着気質(Epileptoid) 几帳面、執拗、易怒性 ヒステイー(Hystery)性格わがまま、自己中心性、虚栄 神経質(Neurotic) 自責性、劣等感、取り越し苦労の5つの性格の類型を測定する。我々は、なかなか自分自身の気質について知ることは、簡単なようで難しい。全体的には50の質問紙に応えることにより、簡単にヒストグラムにより5つの気質について知ることができる。きわめて簡便な心理検査である。

2-3MMPI(ミネソタ多面式人格目録検査;Minnesota Multiphasic Personality Inventory) 1930年代にミネソタ大学で作成されたMMPIは500項目の質問に自分が該当するかどうかで回答していく。臨床尺度(心気症・抑うつ・ヒステリー・精神病質偏倚・男子性・女子性・パラノイア・精神衰弱・精神分裂病・軽躁病・社会的内向性)と妥当性尺度(疑問尺度、虚構尺度、頻度尺度、修正尺度)により、精神病の診断として利用されている。対象は16歳~成人。施行時間は45~80分。

2-4CMI(コーネル・メディカル・インデックス;Cornell Medical Index)健康調査票は、内科等で心身医学的疾病に対する、心理検査として使用されている。アメリカ・コーネル大学のブロードマン(Brodman)やウォルフ(Wolff)らにより、15分から20分で、やさしい質問で患者の精神的・身体的自覚症状から問題を調べるとともに心身の自覚症状チェックと神経症の情緒評価の客観的データを得られる。同時に病歴聴取もできる利点がある。情緒障害の判別診断のスクリーニングテストとして一般内科外来や学校の産業現場の精神保健テストとして用いられる。特にストレス社会の今日、心身の不調を有するクライアントのストレス診断として活用されていることが多い。神経症者が神経症判定図により、縦軸D、I、Jの身体区分横軸M~Rの精神的区分をクロスさせて5%水準で判別ができる。対象範囲は14歳~成人。施行時間は約20分。質問項目は12の身体的自覚症、6の精神的自覚症を質問する。症状判別診断法であり、厳密な意味での心理検査の定義からはずれる。

2-5東大式エゴグラム(Todai Personality Inventory)
エゴグラムは、もともと交流分析理論(TA)の創始者エリック バーン(Bern,E)の弟子、デュセイ(Dusay,J.M)が創った自我状態の分析の方法である。交流分析理論でいう5つの自我状態の働きを測定する。東大式はいわゆる心理検査としての標準化がなされており、統計的に自我エネルギー量を知ることができる。1970年代に交流分析理論が導入されて以来、多くのエゴグラム(自我状態をグラフ化視覚化したもの)に関する質問紙が開発されたが、検査は信頼性が統計的処理され標準化されている。交流分析理論=エゴグラムと思われるほど多くのカウンセリングや心理療法場面で活用され心身症のための心療内科や心理療法から学校や産業の場でカウンセリングや教育領域の心理査定の場で使われている。具体的には3つの自我状態を図Aのように5つの自我状態に分ける。P(Parent)は幼児期に親からうけ受け取った態度や行動のことであり、これはCP(critical parent)厳格な父親的自我状態とNP(nurturing parent)やさしい受容的保護的母親の自我状態のことである。他にA(adult)理性的大人の自我状態 FC(free child)自由奔放な子供の自我状態AC(adapted child)順応した子供の自我状態の5つに分ける。結果の解釈は、CPが高いと厳しき批判的な、低い場合はだらしのないルーズな、NPが高いと保護的で低いと冷たい、Aは高いと理性意的で低いと空想敵的、FCは高いと自由で低いと遠慮がち、ACは高いと順応的で、低いと自立的に開放的になる。

第3節 投影法(projective technique)
主な投影法にロールシャッハテスト、文章完成テスト(SCT)、絵画統覚テスト(TAT)等がある。投影法は、あいまいでつかみどころのない図柄や絵画、あるいは未完の文章等により、ワクを設けないで自由に表現させることにより、本人にも気づかないあるいは言葉で表せない深層心理の欲求や葛藤を、そのテストに反映させることにより性格やクライアントの持つ問題点を明らかにする検査法である。ロールシャッハ・テストやSCTなどの投影法は、その結果の解釈の自由度が大きく、またクライアントのテストに対する動機づけや協力姿勢などが影響してくる。したがって検査者の経験や技術の結果の判定の熟練度などにより結果判定が異なることもある。そのためアメリカでは信頼性・妥協性への批判がある。Y-G検査のように初心者でも簡単に機械的に判定することには適さない。集団施行には適さず、臨床の一人あたりの検査時間が長くなる。

3-1バウムテスト(Baumtest, tree drawing test;樹木) 描画テスト(クライエントに絵やその他ものを描かせる方法)」のひとつであり、知能テストとして生まれたが知能と絵との相関はなく、その絵はクライアントの自己および周囲の認知や仕方やものの考え方、心の奥深いところでの欲求等を知ることができるのでパーソナリティ査定の方法として使用されている。そのひとつであるバウムテスト(ドイツ語「樹木画テスト」の意味)は、1949年にスイスのコッホ(karl Koch,1906-1958).が開発した人格診断のための補助的手段である。バッテリーテストの一つとして開発された。対象は3歳以上から成人までで、約3分~20分くらいで実施できる。施行法は簡単で、A4版の画用紙と柔らかい4Bの鉛筆と消しゴムを準備する。教示は「実のなる木を1本、自由に描いてください」といて描かせる。手軽に実施できるが、それだけに非常に自由度が広く解釈は熟練を要する。このテストの利点は被験者に心理的負担をかけずにできるということと、子どもなどのように自己の心理的問題やストレスを言語化できない場合によい。施行にともなう苦痛もないため多く用いられている人格診断の補助手段である。解釈は描かれたグリュンワルド空間象徴理論をベースに解釈する。具体的にはバウムに描かれた絵をセルフと見立て形態分析(描かれた形)動態分析(筆使い)、空間分析(紙面上の描かれた絵の位置)等を基本分析にする。例えば、自己が強い人は大きな木で太い幹を描く、気が弱く無気力状態のときはか細い木等である。

バウムテスト(Baumtest)樹木画による人格診断

C氏53歳は、妻、娘(小学5年)と地方のメーカーの設計技師として、平穏な暮らしをしていたが、おりからのバブル崩壊の波をうけて、会社は大幅なリストラクチャリングに取り組むことになった。C氏の所属する部門の業務もなくなり、東京の会社に出向することになった。本人、人事部、家族も仕事が見つかったことでの、喜びの異動であった。
出向先の会社での3ヶ月にわたる教育中に、C氏は自分の手が震えるのに気付いた。
上司に相談し整形外科で検査してもらったが筋肉には異常なかった。神経科を受診し「書痙」と診断された。自律訓練法、心理療法、薬物療法を施行された。当初、いっこうに症状は改善されなかった。結果的に、会社をやめ、地元に就職し家族の元に帰ることを心に決めた時期に症状は減少していった。図Bは、治療過程で継続的に施行したバウムテストである。C氏の心の状態の変化を的確に現していると思われる。

3-2 H.T.P.( House Tree Person)テスト 、人物画、家族画
バックBuck,J,Hの人格検査法である。家、木、人物を描くことによって被験者のパーソナリティや環境との相互作用を把握しようとする心理診断、心理療法 である。この検査では描画を描いた後の検査者による質問(PDI:Post Drowing Inquiry or Interrogetion)が大切である。投影法テストの中でもTATやRorschach testと異なり、HTPはバウムテストと同じく自ら積極的に描くという行為によって構成される。前者は刺激に対する受容的反応であるのと異なる。それだけに被験者の成熟度合いや知的な面が反映される。

3-3 SCT文章完成法(sentence completion test)
短い短文に文章を続けて完成させることにより、例えば「あなたの○○の頃は・・・・・・」のように、具体的には「私の故郷での一番思い出は・・・・・・」「私が一番いやなことは・・・・・・」などの未完成の文章にクライアントが思いつく文章を入れて完成させる。60の短文(刺激分)が書いてあって、その文章から連想することをあとに続けて作成し完成させる。その文章からクライアントのものの考え方、人生観、価値観、感情、意識的、あるいは態度を把握する検査法である。施行時間はおおむね30分くらい。.社会・家庭・身体・知能・性格、願望や興味などの志向性や.性格の全体像を考える上で有用な検査法である。わが国では精研式文章完成法などがある

3-4TAT( Thematic Apperception Test ) 絵画統覚検査法=児童用はCATChildren’s Apperception Test(児童統覚検査):モーガン,C.D.とマレー,H.A.(Morgan,C.D.&Murray,H.A)らの考案によるテストである。フロイトの考えに影響されたもので、「空間研究の一方法」として開発された。刺激図版の反応から被験者のパーソナリティーの潜在的な衝動、感情、情緒、葛藤等を把握する投影法の心理検査である刺激図版にクライアントの空想を働かせて物語を作らせ、その結果できた物語に投影された性格、人間関係などを把握する。マレーの欲求-圧力分析理論が解釈の基本で刺激に投影される物語は実際生活上の防衛規制により歪曲された無意識的欲求の結果としている。フロイトの白日夢、挿話、物語、フィクションなどをフロイトが夢により人格診断の手がかりとしたのに対しマレーは、欲求と圧力の力関係と考えた。マレーの考えは「人格の歴史が人格であるというものである。つまり人が生きてきた歴史を形作る時間経過の中に、その人の人格が形成されてきたと考えるものである。人がその中で体験してきた、個人と環境との相互作用の中から彼が体験してきたであろう人生の出来事は、彼自身の欲求と圧力のエピソードであると考えるのである。これらを絵にして彼の前に提示し、それについての被験者の解釈の中に、彼自身の考え方が投影され、それを解釈の手がかりにしようとするものである。分析方法としては主人公を選ぶその働きかけが欲求で、環境からの働きかけが圧力であり、水準分析、解決方式、結末、生活領域、形式分析などがある。TATは、クライアントの物語は個体と環境との相互作用の結果としての主題「できごと」に対する統覚としている。なおCATはべラックにより図版を5~9歳の子供用にしたものである。TATは10歳~成人向けで、施行時間は.60~90分である。

3-5ロールシャッハテスト(Rorschach test)
投映法とは夜道の洗濯物が幽霊に見える等の「見え方、感じ方」を手がかりにして心の状態を探ろうとするものである。ものの見方に私たちの心が反映されるので投影法という。スイスの精神科医のロールシャッハ,H.が独自に1921年に考案した。その解釈に精神分析学が使用されるようになったが、この検査法はロールシャッハの独自の草案である。精神分析はロールシャッハテストの生みの親ではなく育ての親といわれている。スイスの子どもたちの「インクの染み」遊びのインクブロットを利用し、それのしみ模様の図版10枚を見せて何に見えるかを答えさせ、その後その見えた理由について質問をする。その質問は見えた場所、なぜそのように見えたかの理由を聞くことにより.知的特性(思考力・分析能力・知的成熟など)、情緒的特性(衝動性・不安・抑圧など)、社会的特性(対人関心・防衛性など)等を分析する検査法である。例えば片口式(片口安史、1987)では自由反応段階ではカードを被験者に見せて、何に見えるかについて聞いて反応を求めていく。そのあとに、質問段階で出された反応について「なぜそのように見えたのか」「どこがそのように見えたのか」について質問していく。被験者の反応は反応領域(見えた場所)、反応決定因(なぜそのように見えたか)、反応内容の3点にわたりスコアリングされる。適応解釈は、クライアントの反応は、記号化され統計的に処理されるので、反応数、反応時間、反応決定因、スコアリング、カテゴリーなどから、性格を解釈する。例えば誰でもが反応する図版は平凡反応コウモリや蝶で多くは動物反応、と呼ばれ普通の人、月並み、個性なし。あまり反応として見られないような少ない新奇反応は独創反応、病理反応である。その刺激図版に何を見るかによってその人の心の中の関心や知識や生活状態が投影される。例えば人間を図版に見る人は視線恐怖。火山などの無意識のなかの衝動的なものを推測させる。またテスト中の図版の動かし方や、反応態度なども注意をする必要がある。臨床では、精神疾患の初期的兆候の把握に使用される場合や、治療結果の効果測定として使用される。投影法は入りやすく簡単で誰でもすぐにできそうな感じがするが解釈は容易ではなく専門的訓練とスーパーバイザーが必要である。
小1~成人まで、施行時間は人により幅があるが通常は.約50分位である。

第4節 作業検査法 1クレペリン性格検査
4-1作業(検査)法は被験者に一定の課題である加算作や図形の模写や構成等をさせて、被験者の仕事ぶりから態度、能率性あるいは性格の特徴あるいは仕事適性などを考察する方法である。長所は作為的な虚が入り込めないので信頼性を獲得できるが、一方では判定に判定者の経験や熟練性、作業という限られた範囲での解釈に短所もある。

(1)内田クレペリン精神検査(Uchida-Kraepelin Performance Test) 代表的な作業検査法でドイツの医学者クレペリン,E(Emilkrapelin1856-1926)が連続加算法の実験で、その作業の結果から、被験者の性格を知ることができるとした。産業場面の適正あるいは適応のためスクリーニングテストとして幅広く活用されている。意志や思考の障害から精神障害へアプローチしようとしたクレペリンの研究をもとに、わが国の内田勇三郎(元日本大学教授、日本精神技術研究所所長)が1924年頃から都立松沢病院などで精神分裂病やその他の精神異常者のクレペリン加算結果に一定の傾向があることに気づき精神診断テストして純国産の心理テストして発展した(産業能率1933)、1月号)検査方法はランダムに並んだ数字を同士で加算し、連続加算し、その結果できた作業量とその作業曲線から判定する。計算は前半15分、休憩5分、後半15分である。クレペリンは人間の作業特性として「練習」「疲労」「慣れ」「興奮」「意志努力」の5因子を考えた。結果から仕事の能力や物事に対する取り組み姿勢、根気、集中力などを見る。結果の成績判定の見方は臨床的、診断的、第2系列的見方は新規採用や職場適正配置のために産業界で使用されている。正常者の作業曲線として作業量は前半平均作業量は40、後半は45を中心にした曲線を示す。さらに作業量が多いのが第1分目で初頭効果という。前半は2分目以降は下降する。そして7~10分目に上昇する。U字曲線で後半は前半の作業量に対し10%の作業量の増加、4から5分目は盛り上がり、そして下降する。右下がり、後半作業量が多く。誤回答は0が基本的正常曲線である。この曲線からの逸脱度合いを見ていくことになる。作業量はどのくらいか、初頭効果はあるか、前半と後半の間の休憩があることにより後半の1分目が作業量が多くなる休憩効果があるか、最終に努力する盛り上がりはあるか、なお作業に誤計算ご回答は3から4が普通。どのくらいあるか、作業量のバラツキや極端な落ち込みはないか、異常な突出は、作業が極端に少ない、ひどい垂れ下がり、(神経質、神経過敏)大きな落ち込み、激しい動揺ヒステリー気質、動揺の欠如、平板てんかん気質後期作業量の下落、盛り上がりの欠如は粘り強さの欠如投げやり意思の弱さ、誤謬は見栄っ張り、いいかげん、もり上がり激しい興奮をコントロールできない。全体的に少ない作業量、作業放棄、変化などから性格・行動面での異常の判断を判定していく。曲線による気質の判定。初頭効果なし、激しい動揺は情緒不安定、極端に低い作業量は低い知能水準地、病的水準、練習効果見られない。

(2)ベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender-Gestalt Test) ベンダー,L.女史により開発されたテストで、テストの方法は9種類の幾何学の図形を何らの用具を使用しないで模写させ、その模写が性格に行われたかどうかを把握する。おもに脳器質障害や老年性の障害や知的障害の査定に使用される。適用年齢は5歳~成人で、施行時間歯は10~20分である。

第5節知能検査法
5-1田中・ビネー式知能検査(Tanaka Binet Scale of Intelligence) 知能テストは、ビネー,A.とシモン,T.Binet,Aとが、1905年に知能検査を発表したのが最初であり、これがビネー式知能検査であり、今日でも日本をはじめ世界各国で利用されている。心理学者ビネーが知的障害児を発見する診断検査の作成をフランス文部省(教育をしようとした)から依頼されて知的障害児を選別して指導するために開発された。田中寛一がターマンらの改訂した新スタンフォード改定案を元に日本での調査をし1947年に「田中ビネー式知能検査法」を作成した。この検査は教育相談、障害児医療相談、生徒指導、など幅広く利用されている、体重は○㎏、身長は○m○cmで測定される。知的能力は知能指数(IQ)を用いる。知能検査を実施し精神(知能)年齢を測定し、生活年齢(誕生からの実際の年齢)IQ(知能指数)=精神年齢(MA)/生活年齢(CA)×100という式で算出する。IQが100よりも大きな値になれば、標準(同年の子ども)よりも知能が優れていることになり、100以下のときには、標準よりも遅れていることを示す(例;満5歳(生後60ヶ月)の子供が、知能テストの結果、精神年齢5歳(60ヶ月)であった。この子の知能指数は60÷60×100で100となる)。IQの目的は知的障害児の発見なので児童相談所や教育相談所で広く活用されている。ちなみに文部科学省では、IQが75~50は軽度の障害、50~25が中度、25以下が重度の障害と定めている。

5-2 WAIS・WAIS-R(Wechsler Adult Intelligence Scale)成人知能検査
D.ウェクスラーによって考案され、16歳以上の成人に適用される、その小児版はWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)である。ウェクスラー式知能検査では言語性知能と動作性知能に大別し測定する。言語性IQには知識、数章、単語、算数、類似が、動作性IQには絵画完成、絵画配列、積木模様、組合せ、符号から問題が構成されている。そしての全体のIQが出されるようになっている。この検査は例えば障害の種類や程度により問題を適宜出すことができ、潜在的能力を推定することができる。またビネー式検査の比率IQ(精神年齢/生活年齢×100)を使用しているのに対し、ウェクスラーでは偏差値IQを用いているので、個々人の相対的比較をすることができる。

・二因子説 
知能には「一般知能因子(g)」と各知的活動に特有の「特殊因子(s)」の2つがあるとし、1つひとつの一般因子といくらかの特殊因子から成り立つという説。
・多因子説
二因子説でいう一般因子の存在を否定し、知能はいくつかの「特殊因子(s)」に共通な「因子(c)」が組み合わさって構成されているという説。
・階層理論 
バートの説では知能を構成する因子には「一般因子(g)」と「特殊因子(s)」のほかに仲介的な因子があり、その知能水準が高くなるほど一般性を失って、階層を作っていくとしている。

第6節 子どもの心理アセスメント
子どもの発達の検査にはゲゼルとビネーの考え方がある。ゲゼルは成熟説の立場から、子どもの発達は子ども自身の神経系の発達によりもたらされると考えた。例えば、乳幼児精神発達診断法は子どもの日常生活に現れる子どもの行動から理解する方法である。一方、ビネーは子どもの発達を精神年齢の考え方から、検査によって子どもの発達がどの年齢に相当するかに重点をおいた。例えば、新版K式発達検査は、このビネーの考え方を基本に精神発達の側面である運動、認知、言語等の領域で発達を把握する。このテストの後半は知能検査と同じく発達指数として出される。このほかの発達検査として、日本版デンバー式発達スクリーニング検査、遠城寺式乳幼児分析的発達検査等がある。