2010年5月21日

メンタルヘルスの必要性の

1:メンタル不全による休職などの損失コストは一兆数千億円と指摘されています。

我国の産業は大きな変革の時期にあります。この変革は、日本のみならず世界的な潮流であり、カナダストレス研究所長のアール博士は、現代社会はかつて人類が経験したことない変化の時代であり、これを「超高速変化の時代」ハイパーチェンジエイジと名づけています。この変化の速度は、組織と個人の両者において、この超高速の変化に対する適応力が求められています。企業にとっては新規事業の開発などの新たな発展のチャンスの時でもありますが、一方では職場にダウンサイジングやリストラ等の変化をもたらし、企業はこの変化に対応するためにより一層の高い生産性や高付加価値を求めざるをえません。この変化を乗り越えるための資源がマンパワーであります。働く個人は、この変化に対応していくために、仕事の成果と創造性、企画力、顧客優先のサービス化などを発揮するための能力開発が求められています。職場や仕事の変化に遭遇する人は、今までと異なり、常にストレスにさらされることになり、それに伴う、心身の健康と活力保持は重要な課題です。厚生労働省の「働く人々の健康状況調査」によれば、「職場で強い不安や心配、ストレスを感じる」と回答した人々の割合は昭和57年50.1%、昭和62年55.0%、平成4年57.3%、平成9年62.8%と回を追うごとに増加し、また精神障害による労働災害件数と訴訟事件による企業への損害賠償請求も増大しメンタル不全による休職などの損失コストはある試算によれば一兆数千億円と指摘されています。健康に関する問題は会社も個人も両者にとって重要なテーマであり、誰しもが安全で心身ともに健康であることは、人間としてのテーマであります。企業のリスクマネジメントしてストレス対応が必要になってきます。健康問題やストレス関連疾患による医療費の増大、さらにそれらに関連する適応上や就業規則上の問題による生産性の低下のコストの増大は、今や各企業・職場における重要な経営課題なってきているといっても過言ではありません。健康に関する問題は会社も個人も両者にとって重要なテーマであり、誰しもが安全で心身ともに健康であることは、人間としてのテーマであります。

2:リーダーシップの役割り構造とメンタルヘルス

図1は、職位と役割り構造を示したものである。新入社員のときは、基本的な技術があれば対応できる。しかし、年限の経緯に従い、応用力を加味した能力、つまり熟練性(スキル)が求められる。さらに職位の向上にしたがい、経営者なれば仕事の中心はマネジメントになってくる。マネジメントとは「人を通じて仕事の目的を達成することで」ある。とすれば仕事の大部分が人間関係にかかわることになってくる。
今まで学んだ、表 の多数のリーダーシップの理論(ハーバード大学、ミシガン大学、オハイオ大学、マネジリアル・グリット、九州大学・大阪大学、JPコッター、EQリーダーシップ)の中から復習の意味も含めてマネジリアル・グリット理論やPMリーダーシップ理論などを歴史的観点から考察したい。
リーダーシップ理論の発達
(A)アイオワ実験
1940年頃、アメリカのアイオワ大学で心理学者レヴィンの下でリピット()やホワイト()らがリーダーシップに関する研究をしていた。
彼らはリーダーを①民主型、②専制型、③自由放任型の3つに分類した。そして①のリーダーにはメンバーの総意を集め、全員合意の下に作業を進めるように、
① のリーダーには、すべて指示命令し、作業には積極的に介入するように、
② のリーダーには、あらゆることを放任し、作業には介入しないように、それぞれ指示した。
さて実験の結果は、生産量では①②③の順で、製品の質では②①③の順で成績が良かった。しかし、この分類では、民主型とは、具体的客観的にどのような型なのかが踏め一カウである。従って現実に職場で活動しているリーダーに適応して判別することは少し難しくなってくる。
われわれがリーダーシップを学ぶには科学的リーダーシップ、つまり妥当性客観性あるリーダーシップの測定技術が必要になってくる。現実の職場ではリーダーの自発的意思に加えて、環境要因状況要因も影響を与える。純粋な意味での①②③を判別できない。従ってアイオワ実験のリーダーシップ理論は実用的とはいえない。
(B)マネジリアル・グリット理論
前述のホワイトらのリーダーシップの欠点を補い、かつ職場で実際に使用可能にしたのがアメリカのR.ブレイク教授の開発したマネジリアル・グリット理論である。
この理論は図のごとくリーダーの行動を
① 自らの組織の業績達成に向ける関心度合いと
② 業績達成の主体者である人間(ないし部下)に対する関心の両軸にとり、そらぞれの度合い1~9までとしてそこに出来る格子(グリッド)のことである。
それぞれ1蚊らまでの度合いを表し、どちらの場合も1は関心度最低地、9は関心度最高値を表す。
ブレイクは、代表的パターンとして次の5つの類型を行っている。
① 9・9型・・・・・・生産と人間の双方に対する最大の関心を払うリーダーである。特に部下への動機づけや相互理解、参加を尊重する。
② 9・1型・・・・・人間を犠牲にした生産への最大の関心を持つリーダーである。仕事の能率を重んじるあまり、部下の気持ちやその他のことについての配慮が行き届かない。
③ 5・5型・・・・・人間への関心と生産への関心の双方に対するほどほどの関心をもつリーダー。妥協とバランスが特徴。
④ 1.9型・・・・・生産を犠牲にした人間への最大の関心を持つリーダー。友好的なチーム内の雰囲気を重んずるあまり集団目標である生産に無関心になってしまう。
⑤ 1・1型・・・・生産にも人間にも無関心なリーダー。(心理学の基礎知識、東洋他編388頁 有斐閣より引用)R・ブレイクによれば、9・9型のリーダーシップのもとにつくられた9・9型の組織風土こそ理想的組織の中味なのである。またグリッと理論は組織開発に活用される。しかし、実際の現場サイドからは、リーダーシップ理論は単なる理論を越えて、単なる机上の理論ではなく、妥当性あるデーターの裏づけが求められる。理論的、観念的に9・9型が望ましいことがわかっていても、実際に9・9型~1・1型の中で、どのリーダーが部下からの信頼も厚く、実際にどの程度の生産性を挙げているかという証拠になる客観的調査で求められた。
(C)PM式リーダーシップ理論

前述のグリッ理論にかけている実証的な裏付けがあり、効果的なリーダーシップ理論が、三隅ニ不ニ教授によって開発されたPM式リーダーシップ理論である。Pとは集団目標達成機能(Performance)、Mとは集団維持機能(Maintenance)の頭文字を採ったものである。図のようにPM型(PM両機能が強い)、P型(P機能が強い)、M型(M機能が強い)、pm(pm機能が弱い)の4型に分類される。この分類の根拠は部下の上司に対するPM得点により類別される(三隅ニ不ニ教授著、新しいリーダーシップ ダイヤモンド社)
リーダーシップとはPM式リーダーシップ理論では「上司に対する影響力」である。部下がどのように、どのくらい影響を受けているか、部下が上司をどのように認知しているかという上司―部下間相互作用の中で把握される。三角教授は数多くの実験とその他の日本の産業現場の中での調査研究による検証から、P型では生産性向上の限界があること、またM型では、いつしか馴れ合い関係に似た傾向が出てくるといったマイナス面が指摘された。結果的にP/M両機能の強い時にPとMが相乗効果を上げ、生産性ばかりでなく、メンバーのモラールアップにも貢献することを示している。PM式リーダーシップ理論で述べられている部下への人間的配慮であるM機能は、メンタルヘルスの観点からは「カウンセリングマインド」と重なる部分が大きい。M機能とは部下を支持し勇気付け、理解し、サポートし、また、部下が困り、悩んでいる問題があれば、部下理解の観点から相手と対等な関係で、話を聴くことが重要である。「聴いてあげる」「相談にのってあげる」という感じを抱きやすく、優越感や自尊心をくすぐられやすい。知らないうちに高飛車な態度や、自分自身の人生観を押し付けたような説教にならないように、また自分自身では当たり前だと思っていたり、なんなくこなしてきたことが何故出来ないのかと責めたりしないことである。のでは課題達成のP機能(パーフォーマンス)と、維持、部下への配慮を重視するM機能(メインテナンス)です。人とかかわる部分で、対人能力はもとより、人に対するアセスメント、対処の能力が求められることになってくる。
結果的に上司が自分は立派なリーダーだと思っても、部下がついてこなければ、それは自己満足に過ぎない。集団目標を期日までに達成するP機能も大で、部下への配慮も怠らないM機能も強く、かつ謙虚で実績を上げているリーダーが望ましい。三隅は数多くの現場のリーダーへの調査研究のおいて、このPとMの力機能を備えたリーダーが、最も優れたリーダーであることを実証している。

リーダーシップの中にあるメンタルヘルスケア機能
PM式リーダーシップ理論も含めて表のリーダーシップ研究で見られた理論には2つの軸がある。ひとつは課題(仕事)関連、もうひとつは対人関係関連です。マネジリアル理論では、リーダーの業績に関する関心と人間に対する関心です。この機能がまさしく以下の述べるメンタルヘルス機能と重なる。
わが国が高度経済成長時は、戦後の貧窮からの立ち直りの目的の下に、明日の豊かさを求めて多くの人が働いた時期である。従って図3のように、集団を形成する人々の働く欲求は類似しており、集団斉一性も高く、比較的統括するのは容易であった。しかし今日の職場集団を構成を考えてみると高学歴化、専門職化してきており、また豊かな時代の自己実現欲求が強くなっていると思われる。従って構成員の年齢構成を幅があり、価値観も多様であると思われる。従ってPM機能だけでは画一的統制はなじまず、各人の価値観や考え方を理解した職場リーダーシップが必要になってくると思われる。その中にメンタルヘルス的要素が重要になってくる。
PM式リーダーシップ自己診断