吉良上野介は業務災害か
毎日、暑いのです。
とつぜんこういうことを申し上げるのもなんですが、パタパタパタ(うちわであおぐ音)
残暑お見舞い申し上げます。
暑いと「脳神経系統の伝達機能」に異常を発生し「エエエエエエエエイッ、クソッ、オウ!」などどと、とてつもなく短気になったりするものです。
短気といえば、やはり浅野匠守です。
けんか御法度の殿中、松の廊下で、にっくき吉良上野介に刃傷に及んだのである。
上野介の額の傷は、現代医学で言えば全治2週間の怪我となる。
ここで問題になるのが休業補償なのである。上野介の地位は、今で言えば総理府あたりの事務次官といった地位である。実質手取り年収、3千万円相当となろう。
従って、現代の法解釈で考えれば業務上災害と認められ労災適用をうけられるかどうかということになる。
事実認定を進めれば、二人のいざこざは、京都より勅使の接待について発生したのだから、まさしく業務起因性と業務遂行性があり業務災害に該当するかもしれない。場所も江戸城内であるから構内と同様である。
そのプロセスにおいて二人の私怨が大きく対立し、感情的問題に発展した。
御公儀は、吉良におとがめなしで浅野には切腹を申しつけた。
労災が当時あれば、御公儀はこれを吉良に適用したのであろうか。
現存の業務上外の”通念”と判決例からいえば「けんかによる災害」や「社内旅行中の災害」は業務外が原則となる。「けんか」は私怨という私的な要素がつき、社内旅行は”遊び”が基本だからである。
しかし、最近、国立市のパン屋で、従業員の1人が店長に刺されるという事件があった。
けんかの原因は、パンを店に陳列するにあたっての職務分担に関するいざこざである。
従業員が麺棒を、店長が調理用ナイフを持って争い刺したものである。
裁判の結果は、ナイフと棒を持ってのけんかとはいえ、仕事と密接不可分の関係において発生したものであるから、業務上の被災者であると認められた。
「けんかである以上なんらかの意味で私怨が介入することはやむをえない」と行政解釈から大きく踏み出す判断をしたのである。
これからすれば「吉良上野介は業務上災害」という考え方もでてこよう。
かといって、業務中のすべての「けんか」が労災と認められることはない。
あくまでも仕事熱心のあまりでかつ異常な状態におかれていることが必要条件であろう。
怨念うずまく腹黒上司などに「やるか」と一声春秋戦国時代になったら大変なのである。
私は「けんか」もひとつの災害と考え、人間関係良好な職場作りこそ、安全の第一の基本と考えたい。