2010年9月16日

求められる良きカウンセラーとはなにか
総合心理教育研究所 代表 佐藤隆

カウンセリングの基本はカール・ロジャースの「人間中心療法」にあります。ロジャースはカウンセリング理論で人間関係の改善のための「3つの魔法」を強調しています。
①共感
②受容
③自己一致
です。
①の共感とは、相手の気持ちや考えや感情を理解することです。その感情や価値観の背景には育ってきた風土や家族関係といった広い意味での文化が存在します。
共感とは「クライエント様が、どうしてそのように考えるのだろうか」ということを理解していくことと思います。
②受容とは、そのような文化や価値観に根差した「クライエント様の考え方や行動」を受け入れていくことと思います。
③自己一致とは、その受容のうえに「自分自身の考えた方や見方」を振り返り、対応することです。
つまり、この時にカウンセラーの心の中で「受容」「混乱」「統合」が行われるのです。このプロセスがうまくいくと「良きカウンセラー」の対応となります。
いわゆるプロフェショナル・カウンセラーとは、ここがうまくいく「専門的能力」を保有しているということです。
しかし、ここがよくできているかどうかということは、なかなかカウンセラー自身にも自覚できません。クライエント様からのフィードバックがあってはじめて気づかされるのです。
企業のメンタルヘルスでは、カウンセリング料金は会社が支払い、社員はサービスを受けるというシステムですから、受ける社員はいやなカウンセラーだと思ってもあまり拒否したりしません。しかし、クライエント様が直接お金を支払う場合は、いやなカウンセラーに対しては「拒絶」するということになります。
われわれカウンセラーは常に自分自身の対応が「ロジャースのカウンセリング理論」に従いクライエント様の役に立っているのかを常に猛省しつつ対応をしなければならない命題を背負っている」のです。
良きカウンセラーに求められるのは
(1)高い専門知識と崇高な倫理観に立脚した中立性
(2)クライエント様の心理の背景にある価値観や文化の理解
(3)クライエント様に受容を示しながらの傾聴の技術
などです。
自戒の意味で難しいのが自己一致です。特に当研究所には、高い学歴を持つカウンセラーが多く所属している。大学院での学びがこのクライエント様とのカウンセリングの良否を決定する要因にはならないのです。そのような学歴や経験が逆に阻害要因とすらなる場合があります。
OJTつまりオンザ・ジョブ・トレーニングで習得する以外にないのです。
筆者は、これをもっとわかりやすくするために次のように咀嚼して考えています。
①カウンセラーは常に高い志を持たねばならない。その志の高さは、ノンバーバルな態度・表情を通じてクライエント様の心に伝わっていくのです。
②クライエント様は初対面の印象を大事にします。カウンセリングで最も大事なことは最初の面接です。ロジャースはこれを「信頼感の醸成(ラポール)」といいました。もっとわかりやすく言うと長年の心理臨床の経験を通じて専門家は、このことを「ひとめぼれ」の技術と呼んでいます。不安や心細さの心理状況にあるクライエント様が「自分の心の問題を開示して相談しても、この人ならば大丈夫に違いない・・・という信頼感を持ってもらうこと」です。
③「犬嫌い」ということ。カウンセラーに求められるのは専門的態度です。自分の好き嫌いでクライエント様を選択するのは、理屈としては、許容されるかもしれません。しかし現実の心理臨床ではなかなか難しいのです。昔からの教えを参考にすれば、カウンセラーの技術の一つに「犬嫌い」という言葉があります。それは「犬は犬嫌いの人には本能的にかぎ分けてかみつくが、犬好きの人には、かみつかない」ということです。
カウンセラーに求められるのは、専門的態度で、いかなるクライエント様にも「信頼感の醸成」につながる・・対応の仕方が求められているのです。これも言うはたやすいのですが、行うことは難しいのです。カウンセラーの能力や専門性の向上は「誠実・親切・迅速」を旨として、自戒の意味を込めてではありましが、「衆人皆我師」や「修己治人」に習い、日々自己研鑽していくことで高めていくことが肝要と思います。