2011年2月12日

●事例2:(上司がストレッサーのケース)
大手農業機械メーカーの地方販売営業所は、本島所長と女性事務員と4人の営業メンバーという構成でした。若手ホープの営業マン平野さん(39歳)がうつ病になり、3カ月の休職後復帰になります。珍しく医師は「非常に良くなり大丈夫です」と太鼓判を押し、会社の復職判定員会でも「良好」でした。
しかし、わずか2週間で平野さんは出勤しなくなりました。主治医も産業医も太鼓判を押した手前、頭を抱えてしまいました。「なぜ?」という疑問は人事部にも蔓延しました。実は平野さんが初めて口にしてわかったのですが、本島所長がストレッサーだったのです。所長はトップ営業マンになったこともあるほどの「やり手」でした。平野さんにも「うまくたちまわれ、真面目ではなく適当がいい」といっていました。一方、平野さんは生真面目で曲がったことが嫌いです。尊敬する人は、吉田松陰や西郷隆盛、二宮尊徳、上杉鷹山でした。デスクは所長の隣でしたが、所長は昼から私用電話の連続です。馴染みのホステスと大きな声で夜のデート話をすることもあります。トップの行動ですから誰も注意ができません。しかし、平野さんはリーダー自ら、規律違反は許せない、と体が震えてくるのでした。元気になって戻っても「ストレッサー源」との隣り合わせには耐えられなっかたのです。

●解説
人と人の関係では、やはり「相性」があります。しかしビジネスの場では、「相性の問題」で簡単に片付けることはできません。上司自身がストレッサーになっている場合は、職場のメンタルヘルスを進めていくことそのものが、ある意味ではストレスになってきます。しかし、人を動かすのがリーダーの仕事ですので、人を動かすためには「修己治人」が必要です。これができていないのに自己開示で話し合おうと言っても、話はうまくいきません。
「相性が悪いのでは」と感じられたら、まず「相手の性格」を理解していくことが大事です。そして、まず自分がその部下をどう思っているかを考えることが必要です。何となく嫌っているとすれば、相手も嫌われていると感じているかもしれません。逆に「部下が自分のことをどう思っている」を聴いてみましょう。このように日常業務の中で相互理解を進めていくことです。
この相互理解の延長で、「わたしもあなたのことを理解することが少なかったかもしれません。なにかわだかまりがあったら率直に言ってください。わたしも自分の気持ちを率直に伝えるようにします」「忙しさにかまけて、話し合いの時間が少なかったことをお詫びしたい。ぜひ力をかしていただきたい」といった働きかけをするのがいいでしょう。
焦ったり、言葉だけで「ごめんね」といっても、言動がついていかなければ、それは逆効果になります。冷静に自己を見つめ、「関係性」を良くするという目的で対応することです。
長年、産業現場でメンタルヘルスを推進していると、この部分が非常に大事だと強く感じます。管理職研修をいくらやっても、「わかること」と「できること」は違うのです。