エピローグ
職場で見られる心の不健康な状態の変遷
神経症そしてうつ病 そして発達系
産業職場におけるメンタルヘルス課題と必要な臨床心理学的支援
かつてわが国の労働安全衛生や健康管理の主な対象は、戦後の肺結核という感染症の疾患であった。私が鋼管病院にて入職した1971年頃は、産業医というと結核専門医の先生が大多数であった。やがて薬の開発、衛生環境、栄養等の改善により、結核は減少し、次第に生活習慣病(当時は成人病)や精神疾患や神経症が推移してきた。 日本で最初にいわゆる「職場のメンタルヘルスサービス」を創始した日本鋼管病院精神衛生室にて筆者らは昭和48年に「職場のメンタルヘルスマニュアル」という管理職のためのテキストを作成した。その中に、「職場で見られる心の病」という項目がある。統合失調症、双極性障害、神経症等々が多かった。(表1は当時の外来の患者数である(『職場のメンタルヘルス』日本鋼管労働健康開発室, 昭和61年6月号より)。統合失調症の効果的薬剤の発展により職場内での妄想などのトラブル件数が低下し、平成7年頃から「うつ病」が増加し、今に至っている現在の新型鬱や大人の発達障害が課題となっている。