うつになる若い人が激増だ。
この「うつ」には新型うつ病という名前が付いている。
さらに人の心の動きがわからない、一度に複数のことができない、コミュケーションがうまくいかない等が特徴の「アスペルガー」「注意欠陥・多動障害」「学習障害」という発達障害の若者も激増中といった報道記事も良く出ている。さらに多くの管理職は「若者は脆弱になった」という。
本当にそうなのだろうか。
40年前の私の鋼管病院での臨床経験でも「心の病」の若者は大勢いたのですが、「うつ病」ではなく「神経症」という診断が多かったのです。時系列的に観察してみるといつの時代も同じ問題があったように思われる。4000年前のピラミッドの壁にも、「今の若者はダメだ・・・」といった落書きがあったという。
高度経済成長時代の「現代コミュニケーションセンター所長・坂川山輝男氏」は、毎年、企業に入社するフレッシュマン気質に対するユニークな名づけ親として有名であった。
例えば、今までのネーミングを見ると
- 「瞬間湯わかし器型」(スイッチをつけるとすぐ熱くなるが冷えるのも早い。S57年)、
- 「麻雀パイ型」(大きさと型が同じ。S58年)、
- 「コピー食品型」(そつがなく外見は本物風だが、中味はほど遠い。S59年)、
- 「使い捨てカイロ型」(一人では熱くならないが、にぎったり、もんだりしているうちにジワジワ熱くなってくる。S60年)。
現代若者はなんとネーミングしたらいいのだろう。
その中でも「新入社員とのギャップ」に対して、われわれは新たな理解と認識を持たねばならないようだ。「新型うつ病」や「発達障害」といった観点ではなく、もう一つは、彼らが生き学んできた社会の変化ということに目をむけることも重要である。
その第一は、ライフサイクルの変化である。
かつて「人生50年」が人間の寿命であった。栄養の改善と衛生思想、あるいは医学の発展により、つい最近までは「人生80年」、いつの間にか20年も伸びて、 いまや「人生100年」の時代に突入している。安倍政権も「生涯現役」をキャッチフレーズにした。
しかも、欧米先進国は100年かかって変化しているのに、日本はわずか20~30年の間に世界でもトップの長寿国になってしまった。
今日のような人生の長さというものを一つのゲシュタルト的関観点で考えれば、当然、老年期のみが長くなったということではなく、そこに到達するプロセスである中年期、青年期にも大きな変化を及ぼしていると考えられる。
これを竹に例えれば、尖端の節のみが一つだけ長く伸びる事はないのであって、それぞれの節目から節目の間が少しずつ成長し、全体として長く伸びることになろう。
この場合、単に間が伸びるということではなく、それぞれの節目そのもの自体の変化も見られる。
例えば青年期の前段の思春期でも、早熟化と幼稚性保存が混在し、不均衡(asynchrony)が特徴的になり、多くの親を悩ます結果になる。
青年期も同様で、結婚年齢は男子の場合はここ数十年で27歳から31.5歳へ、女子はこの間に23歳から29.2歳に上がった。人生80年といえば50年に比べて30歳になっても、まだ大人にならなくてすむ青年が増えている。人生100年時代になれば、青年期も50歳ということになる。親の年齢も若く経済的余力がそれを可能にしている。「モラトリアム青年」や「依存症」「甘え」が現代若者気質を考える時は、個々の性格よりも、その背景となっている社会的変化を見い出すと、わかりやすい。
「若者が弱くなった、ストレス脆弱説」って考える根拠は今のところ、根拠が薄い。モラトリアムの高年齢化ということも考えられるのである。