“台所症候群”という本が出た。
良妻賢母ヒトスジ。炊事、洗濯、子造り万端のウーマンが突如としてキッチン拒否症になってしまうのである。
“燃え尽き症候群”にはじまり“出世症候群”“オジン症候群”とさまざまなシンドロームブームが生まれている。
臨床社会心理的現象にマスコミが先行し、その医学的心理的解明は後追い的についていく。かような現象の背景には、個人的ヒストリーだけではなく社会的風潮や世の価値観の変容が常にともなう。
食糧難の時代や貧しき経済状況の中で、世の人々の求める美的センスは、むしろ「ふくよかな」ものにむけられる。
現代は、逆でダイエットしほっそりとしていることが一般的美の条件になったような感じである。書店には“3日で10キロヤセラレル”的本が山と積まれている。
自己の生理的状態を無視した、減量のつもりが“思春期拒食症(eating disorder)”となって、生命の危機までももたらす。
「精神医学からみた日本の昔話」をしよう。
有名な日の神と仰がれた、天照大神御神(あまてらすおおみかみ)がアマの岩戸におかくれになった。
なかなか出てこないので手力男命(だじからのみこと)が、その前でディスコ調にフィーバーしてみせた。
あまりのにぎやかさに天照大神御神がちょっと戸に手をかけ、すきまからのぞいた時に手力男命が、ウーンとふんばって戸を開け、この世は再び太陽の光に満ちたのであった・・・・という。
この神話の生まれた時代・日本は、卑弥呼に象徴されるごとく母権社会であった。
子の出生もすべて母系をもって識別するしかなく、女子の機嫌をそこねた場合、多くの社会的機能障害を起こさせたのではないかという説もある。
また「愛情問題のもつれ」としてみれば、一般的ヒステリー症状(今は解離性障害というが本書ではわかりやすくヒステリーと称す)と読める。
ヒステリーの語源はヒストロ「子宮」であり「子宮が欲求不満を起こしてさわぐ」の意である。
自己顕示欲・虚栄心・諸々の自体症状を呈し、相手を困らせる。のちに女性特有のものと思われていたが男性にもきわめて頻発することがわかった。
モモ太郎の昔話は、軍国主義の時代には戦陣訓になった。キジは情報、サルは戦略、イヌは忠誠であり、キビダンゴは報酬である。平和時においては、リーダーシップの座右の銘となる。キジの仕事をイヌにさせてみたり、キビダンゴを一人占めにしたり、鬼ではなく同僚や部下に八つ当たりしたら“男のヒステリー”を疑ってみるのがいいのかもしれない。尚、アメリカ精神医学会の診断項目では「ヒステリー」ではなく「解離性障害」となる。