2020年6月29日
第1章 メンタルヘルスとは何かを正しく理解するために
PARAGRAPH 1 今なぜ職場でメンタルヘルスが必要なのか
企業がメンタルヘルスに対して最初に関心を持つようになったのは、不幸なことではあるが、1889年2月9日早朝の日航機の墜落事故が契機であると言えよう。マスコミによるK機長の「心身症」報道は、「精神障害」によるものと判明さえるまで社会的に大きな反響を呼んだ。各企業の人事・労務や安全衛生あるいは健康管理等の担当者は少なからずショックを覚え、そのリアクションとして「精神衛生管理」の必要性につながったと考えられる。
また、1995年頃から、高年齢化や成人病の増加が社会的問題となるにしたがい、「より豊かな人生の創造と健やかな心身の健康開発」こそが職業生活の基盤であるという労働安全衛生法の主旨を基本に「THP(Total Health Plan)」の考え方が多くの企業に導入された。
それに従い、単なる「疾病管理」という次元を離れて、心身共に疲憊して活力を失っている従業員を、より健康に活性化させる必要性から、メンタルヘルスのニーズが高まってきていると考えても良いだろう。