~結果を出しているリーダーはなぜストレスに強いのか?~
創造や変革の志士を目指すリーダーにとって、修羅場などの局面では、非常に大きなストレスがかかる。このストレスに対し、自らのセルフケアを行うためには、ストレスとは
何か、どう対処していくかを理解し、実践できることが重要である。
通常のストレス調査では、一般社員やストレスがある人の調査は多いが、特に厳しい環境の中でストレスを対処して結果を残しているような経営者やリーダーを調査している研究が少ないため、リーダーがセルフケアを如何にしていくべきかの具体的な処方箋が少ない。
このリーダーのストレスに対する研究を深めていくことは、次世代リーダー達がこれから
迎える試練に対するストレスに対し、臨床心理学的、ストレス科学的、経営学的視点からどう考え、どう対処していくかの具体的な処方箋を提供できる可能性がある。しかしながら経営者のこのような研究は少なく、先行研究から学ぶ視点も重要であろう。
そのためには経営者とは何かという、定義から始めることが必要になる。
私が把握している概念としては以下のものがある。
経営者とは、事業意欲や実業を尊ぶ精神と進取の精神をかなり強く持ち、自らが従事している事業を通しての崇高な理想を持ち追求している(金森、1995)。
経営者の性格は明るく前向きであり、A型行動傾向が高くストレスも大きいと考えられるが、ポジティブにとらえ過剰ストレス状態に陥る人は少ない(日本生理人類学会誌)。概してポジティブでどんな局面にもうまく対応できることが、経営者像となっていることが広く考えられている。
さらに、経営者に求められる資質として松原(2006)は自身の特性をしっかりと持ち、自他共に開かれた、確立した自己を持ち合わせていることで、これらモデルが成り立つことが想定される。経営者のリーダーシップについて、様々なモデルや理論が打ち出され、その枠にはまる者こそが優秀な経営者であるとされている。
しかし、全ての経営者が生まれた時からその素質が備わっている者は少ない。
中国経営者調査チーム(1995)によると、経営者2756名のうち、神経衰弱に陥っている者が26.9%、慢性胃炎が24.1%、高脂血症が17.6%など、健康面、精神面共に問題を抱えていると報告している。
また、Grant Thornton(2006)によると、主要30カ国の中堅・中小企業のオーナー経営者7000人のストレス度が増加しており、ストレス増加と休暇日数に相関がみられたと報告している。
現在まで、ストレス調査およびメンタルヘルス調査は、安全配慮義務履行の観点から、従業員に関するものが多くをしめていた。国としての施策が発表されたり、EAPが数多く進出していたりと、従業員へのメンタルヘルス施策は非常に多くある。しかしながら、経営者をターゲットとした研究は少ない。さらに経営者のストレス耐性に関する調査も少ない。従業員とは別のストレスや意志決定に迫られる状況が多くあるにも関わらず、「経営者は強い」の一言ですまされてしまっているのが現状である。数多くのベンチャー企業が市場に参入し、若者の士気を鼓舞させ、また、新たなコンテンツを提供している現在、この経営者のストレス耐性についての研究が大いになされるべきと推察する。今後起業を考えている若者へ良き知見となると思われる。