佐藤隆の連続小説「桜木健太郎の涙」です。
北の小さな町で健太郎は高校時代を過ごした。時代は日本をあげて「高度経済成長」の熱に酔っていた。文字通り東北の町は「出稼ぎの町」へと変貌していた。「母ちゃん、爺ちゃん、婆ちゃん農業」という言葉が新聞を飾っていた。いつの間にか、お金は送ってくるのに父ちゃんは東京や愛知県から戻らなくなっていた。残された子供たちがほしかったのは送られてくる父ちゃんからの高価な「おもちゃ」ではなく父の図太い「かえったぞ・・・」という声だったのだ。…時は2012年春、臨床心理士となった健太郎は銀座通りを歩いていて聞こえてくる中国語に高校時代の日本の出稼ぎが重なる。
(*このメンタルヘルス小説に出てくる人物や会社はすべてフィックションで実在するものではありません。)