管理職のメンタルヘルスの範囲と目的
専門家の行うメンタルヘルスと管理職の行うそれとではどこが違うのか。前者は無意識レベルの深層心理を治療の対象とし、後者は意識水準における次元での心理援助ということである。カウンセリングでは長期にわたってパーソナリティや行動の変容を目的とする。管理者が部下に対して行う面接では、管理者自身も多忙であるため、時間的、労力的、技術的にも限界がある。面接の対象者も問題を持って訪れるというより、面接が業務上の問題に集約されるという点も異なっている。管理職としての心身の健康上の変化の徴候等を察知し、大事にいたらないよう予防することも含めて、その個々人の職場適応をより積極的に進めることである。また、職場の雰囲気を乱すトラブルメーカーに直接的にあるいは意図的に働きかけをしたり、行動に急激な変化が見られる者に声をかけたりと日常の業務の中でできることを率先して心がけることが大切である。総じて言えば、管理職は「カウンセラー」となるのではなく、カウンセリング知識や技術を活かした対人関係を身につけた「カウンセリング・マインド」で接することが肝要となろう。