PARAGRAPH 3 メンタルヘルスとは何か
- メンタルヘルスの本質
次に、産業におけるメンタルヘルスの重要性については理解したものの、メンタルヘルスとは、いったい何であり、何をするものであるかということが問題になってくる。この点についてT.M.リングは、その著『職場の精神衛生と人間関係』(笠松章・坪上宏訳編 誠信書房)の中で「産業における精神衛生の目的は、個人のストレスを最小にし、共同の成果を最大にすることである」と述べている。
産業の主要な目的である利潤の追及に走れば働く個人のストレスは次第に増加し、ある一定の限界でその共同の成果は減少する。一方個人のストレスが少な過ぎても、主要な目的である生産性が低下してしまうことになる。
つまり働く人々の心身の健康を大事にしつつ、企業の主要な目的である利潤や生産性を最大に求めていこうとするところに産業メンタルヘルスの本質があろう。