メンタルヘルスを考えるには、暗い時代を忘れてはいけない。臨床心理学は、現実生活の知的障害児、情緒不安や不適応で困っている人々への援助の必要性から生まれた比較的若い学問体系であるので、どうしても隣接関連領域の心理学はもとより、精神医学、精神保健学、心身医学、社会福祉学、哲学、社会学等との関係を避けて通ることができない。その中でも最も関係が深い精神医学や精神保健学の歴史との観点から考察してみると、ギリシャ時代は「抑うつ状態」を表す「メランコリー」は「黒い胆汁」、ヒステリーは「子宮」という意味のギリシャ語が使用されていた。このことから精神障害は身体的疾患と考えられ、ヒポクラテスやプラトンは、精神病を脳の病気と考えていた。