症状:統合失調症とはおも10歳台~20歳台に発症する内因性疾患で、症状は陽性症状と陰性症状の2つに大別できる。前者は初期に見られ妄想や幻覚、思考障害、自閉的生活など、すぐに異常と思われる症状)と陰性症状(感情鈍麻である無関心、道徳、知的感情の低下)や無気力、奇妙な格好などの症状がある。である。妄想とは病的判断の誤り、訂正不能な信念であり、誰も悪口を言っている事実がないのに悪口を言われる等で、不合理で了解不能な異常な体験である。事実を誤解する聞き間違い等は錯覚であり、妄想ではない。錯覚とは実際に存在するものを誤って認識するもの、例えば夜の柳が幽霊に見えるなどである。幻覚(物が無いのに見える)とは対象のない知覚である。他に幻聴(話がないのに声が聞こえる)や幻視(虫がいないのに虫が見える)、幻触(虫身が体をはい回る感覚)等がある。これらのために生じる言語や対人関係行動の異常である。後者は慢性期に見られる意欲の低下などである。了解できない一時妄想と、患者の心理状態から了解できる二次妄想に分けられる。他に客観的表情は硬い、冷たい、空虚、ひそめ眉、しかめ面、 とがり口、空笑などが特徴である。態度と行動は昏迷(意欲なく無反応状態、動かなくなる)や減動、カタレプシー(Catalepsy)、常同、ステレオタイプ(Stereotype)、拒絶症(何事もこばむ)、独語等の症状が見られる。思考制止はうつ病でもみられ、思考途絶は統合失調症でみられる。統合失調症で見られる症状に*印のようなK.シュナイダーの統合失調症の1級症状がある。被害妄想(人に笑われていると思われていると思う)、追跡妄想(見張られている)、関係妄想(悪口をいっている)、血統妄想(エジソンの生まれ変わり)、恋愛妄想(有名女優と結婚する)、発明妄想(私はノーベル賞学者である)。*思考化声(自分の考えていることが声になって聞こえてくる)、思考化視(考えが見える)、注察妄想(他人に注目されている)、*思考奪取・吸入(自分の考えが他人に取られる。吹き込まれる。幻覚とは異なり被影響体験である)、思考察知(考えが他人に知られる)、*妄想知覚(見たことや聞いたことを妄想的に解釈する)、*作為(人に命令させられている)体験、*幻聴(声が聞こえる)。原因は未詳である。
有病率はおおよそ130人に1人(0.7~0.8%)。精神疾患の7~8割(精神病院入院患者の約6割を占める)。国や文化、男女による違いもない。予後は約25%が寛解、治療効果あり25%、不完全寛解25%、荒廃が25%といわれている。原因には生物学的要因では一卵性双生児の一致率60~80%。二卵性双生児一致率10~16%。片親が統合失調症の子どもの危険率10~15%遺伝も関係あるが、他の因子も関与していると考られている。心因論としてはアメリカの力動精神医学的考え方や環境要因説ではベイトソンの二重拘束理論のように母子関係、精神的負荷などが要因となることもあるとかつては考えられた。
障害者雇用促進法により、現在では障害者手帳を持つと働く先が増加してきている。社会的なハンディキャップに対して会社は本著で展開するような科学的知識を土台に、関連機関と連携をしてサポートしてほしい。H28年4月に「改正障害者雇用促進法」施行。
H30年4月障害者使用義務の中に精神障害者も加わった。障害者職業支援が重要になった。統合失調症は、病識(病気という認識)がなく、薬を中断し再発に至ることが多く、社会復帰のために家族の協力を基本にコンプライアンス(薬物療法の服薬遵守)が重要になる。尚、精神科リハビリテーションの SSTでは「脆弱性(ぜいじゃくせい)-ストレス一対処力量モデル(個体が持つ脆弱性と環境ストレス因子)」をとっている。
その上に心理療法、リハビリなどが効果的となる。神経伝達物質のセロトニンやドーパミンに作用する抗精神病薬は進歩しており、統合失調症にはドーパミンD2受容体遮断作用が効果(陰性症状には効果見られない)的と推察されている。臨床心理学の心理療法では薬の処方はできないが、クライエントとの信頼関係をベースに、日常の適応への援助や悩みへのサポートはできる。症状が緩和し、自尊心や自己効力感、社会生活を回復し、その人らしい生活が可能になる状態を「リカバリー」といい、専門家にも統合失調症に罹患したかどうかわからない完全なリカバリーに至る人が約3分の1、専門家にはわかるが一般の人にはわからない程度の症状を残しているリカバリー状態人が約3分の1,残りの約3分の1の人が、何らかの支援を継続的に必要とする不完全寛解の状態に至ると考えられている。